私が映画をつくる理由は…「人類への愛」と「子供たちのため」
──40年も前から構想していたアイデアを再構築し、映画化するのは大変ではありませんでしたか?
F・コッポラ監督 たいていの場合、私はあるプロジェクトに取り組んでしばらくすると、なぜかそれに嫌気がさして、そのまま放置してしまうんだ。そして別のプロジェクトに取りかかり、また同じように嫌気がさしてほかのことをする。そんなことを繰り返しているのだけれど、面白いことに、嫌気がさして放置しておいたプロジェクトを見直すと、案外悪くないことがある。そうやって“発見”したアイデアやプロジェクトを映画化してきた経験を基に、『メガロポリス』も同じように取り組むことができたよ。
──『メガロポリス』は壮大な叙事詩でありつつ、家族の絆を描いた物語でもあります。監督はこれまでの作品でもよく家族をテーマに作品を作られていますよね?
F・コッポラ監督 私は、人類は「ホモサピエンス」というひとつの家族だと信じているんだ。30万年ほど前に誕生し、文化も見た目も違う種族が、環境に応じて進化してきたわけだけれど、地球上にほかに、人類ほど進化した生物はいない。言うなれば天才だよ。だから人類はみんな「天才の従兄弟」と言ってもいいのではないかと思っている。
でも、人間は残酷なことや不幸を招くようなことばかりして、幸せそうな人が少ない。
そこで私が考えたのは、私たちが直面している問題にどう対処すればいいのかについて、考えさせるような映画を作ろうということだった。そして、権力の悪用や美しい地球環境の破壊を食い止め、子供たちの喜びと幸福、充足感のある世界を創造する。つまり、私が映画を作る理由は、人類への愛と、そして、子供たちのために素晴らしい世界を作りたいという希望からなんだ。それが私にとって非常に重要なことでもある。
なるべくして映画監督になった娘と息子のこと
──あなたの背中を見て育った娘や息子が同じように映画監督として活躍しているのをご覧になってどう思われていますか?
F・コッポラ監督 なるべくしてなったと思っているよ。私は昔から、撮影で10日以上家を空ける時は、子どもたちに学校を休ませて一緒に現場に連れて行った。子どもたちは知らない土地で、映画の製作クルーと一緒に過ごす毎日の中で、映画製作についてあらゆることを自然と身につけていったのだと思う。
娘のソフィア(・コッポラ)は、『地獄の黙示録』(79年)の撮影中、まだ4歳だった。一緒にフィリピンに連れて行って中国の学校に通わせていたよ。中国語もわからないのにね。でもそうした体験も彼女にとってはいい経験になっていると思う。
