神奈川県・伊勢原市にあるマンションの1室でタトゥースタジオを経営している女性彫師のおむおむのゆいめろさん(25)。全身にタトゥーを入れ、SNS総フォロワー数約6万人を持つ彼女は、若い女性を中心に人気を集めている。

 もともとはイラストレーターを目指していたが挫折し、病院の事務職を経て彫師になるまでの道のりを語った。

おむおむのゆいめろさん

「お腹が裂けたのかと思うくらい痛かった」

 ゆいめろさんが初めて自分の身体にタトゥーを入れたのは22歳の時。

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「タトゥーにネオトライバルというジャンルのタトゥーがあるんですけど、それをSNSで見つけた時に一目惚れしちゃって。『これを自分の肌に入れたい!』と思いました」

 タトゥーを入れる場所によって痛みの強さは異なるという。「わたしはへそに入れた時にめっちゃ痛みを感じました。全身からやばい汗がでまくりでしたね。お腹が裂けたのかと思うくらい痛かったです。泣きそうになりましたし、二度とへそにタトゥーは入れたくないです(笑)」

 幼い頃からイラストを描くことが好きで、高校生の時にイラストレーターになることを夢見ていた。しかし、美大受験の対策が金銭的に難しく、夢を諦めることになった。「美大への進学を諦めた時に、絵を描くことも嫌いになったんですよね。これ以上描いてもなんにもならないなって」

 高校卒業後は病院の事務職として就職。20歳の時には事務長に昇格したが、業務量の多さに疲れて退職。その後フリーターとして居酒屋で働くようになり、タトゥーを入れ始めた。

 彫師を目指すきっかけとなったのは、アルバイト先から正社員になるよう誘われた時だった。「自分のタトゥーを見ながら『そういえば彫師ってどうやってなるのかな』と疑問に思って。彫師の友人がいたので『どうやってなればいいの?』と聞きました」

背中にもびっしりタトゥーが

 友人から機械の使い方を教わり、自分の肌で練習した後、本格的に修行を始めた。しかし、TikTokに投稿していた彫師修行の様子を母親が偶然見つけ、彫師を目指していることが家族にバレてしまう。「わたしが彫師を目指していることに戸惑っていましたが、話し合った時に『やるならとことんやるように』と背中を押してくれました」

 一方、同居していた祖母は泣いていたという。

「その世代だとタトゥーに対するイメージが良くないのは仕方ないことだとは思います。でも『なんでわかってくれないの!』と悲しくなって、ちょっとした口喧嘩になりました」

 しかし、今では冗談で「わたしもタトゥー入れようかしら」と言うまでに受け入れてくれたそうだ。

 スタジオをオープンした当初は「アルバイトで貯めた50万円を引っ越し代や開業資金に使ったので口座の残高が98円に減りました」と苦労したが、SNSからの集客が功を奏し、なんとか生活できるようになった。「もしお客さんが全く来なかったら日雇いのアルバイトに応募しようと覚悟を決めていました」

 現在は1日に2~3人のお客さんにタトゥーを施術し、タトゥーの仕事を通じて再びイラストを描く楽しさも取り戻したという。

「タトゥーを彫るのって人の身体に絵を描く仕事なんですよね。手を動かしているとめちゃくちゃ楽しいですし、好きだなと思います」

写真=松本輝一/文藝春秋

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