――ベテランの男性カメラマンだと教え諭すタイプの人がいそうな気がしますね。
撮影監督はただでさえ大きな存在なので、もしも年の若い女性監督に対して威圧的な態度で指図をしていたら、そういう態度はスタッフにすごく影響を及ぼしてしまうと思うんですね。そういったことを浦田さんは分かってらっしゃって、あえて私に対して常に丁寧な態度を取ってくださったと思います。とにかくポジティブで、天気が心配な時でも「晴れますから大丈夫です」と。それで本当に晴れちゃうんです。
作品そのものが印象派の絵のようだ
――本作はフランス、シンガポール、フィリピン、インドネシア、カタールとの国際共同製作です。多くの出資者から口出しをされるなど、大変なことはなかったですか。
プロデューサーは大変なこともあると思うのですが、私としては良いことばかりでした。様々な角度から脚本や編集へのフィードバックをもらい、頼りになるアドバイザーが沢山いる感じです。自由を制限するような口出しではなく、みんなで一緒に作ってるという感覚がありました。
――『ルノワール』というタイトルですが、作品そのものが印象派の絵のようだという指摘が、ルノワールを産んだフランスからありました。
言われて気づいたというか、発見でした。印象派の絵画は、様々な色の重なりを近くから見ても何が描かれているか判別しづらいですが、引いて見た時にひとつの絵が浮かび上がってくる。この映画で描かれる個々のエピソードも、一見繋がりがないように初めは見えるけれど、終わった時に映画の全体像がじわじわと立ち現れるところが印象派の絵を思わせる、というようなことを言われました。ですから、なかなか良いタイトルだなあと改めて思いました。
――今回のカンヌ映画祭では日本映画がたくさん出品されました。日本映画は本当に良くなってきていると思われますか。
勢いがあると思います。海外映画祭で評価される監督が増える中で、映画を作る人たち全体にそれが良い刺激やエネルギーとなり、同時多発的にいろんな良い作品が生まれ始めている気がしています。今回カンヌでは監督週間の『見はらし世代』を観る機会がありましたが、素晴らしかったです。これを団塚唯我監督が20代で撮れてしまうのは、濱口(竜介)さんなど世界的に注目を集める監督が活躍する時代にリアルタイムに生きているということも関係があるのではと感じました。
『ルノワール』
脚本・監督:早川千絵/出演:鈴木唯、石田ひかり、中島歩、河合優実、坂東龍汰、リリー・フランキー/2025年/日本・フランス・シンガポール・フィリピン・インドネシア・カタール/122分/配給:ハピネットファントム・スタジオ/©2025『RENOIR』製作委員会 / International Partners/6月20日(金)より全国ロードショー

