レオ 実際に街に足を踏み入れると、歩いているだけであちこちから手が伸びてきて、僕の服を引っ張ってくるんです。要は、お店に僕を引きずり込もうとしていたんだと思います。すごく異様で、怖かったです。そこで引き返せばよかったのですが、好奇心に負けてとあるお店に入った瞬間……ガチャンと扉が閉まって、鍵がかかる音がしました。
そして、ほとんどベッドで占められている小さな部屋の中には、漫画『幽☆遊☆白書』に出てくる戸愚呂兄弟のような、極端に大柄の男と極端に小柄な男が待ち受けていて。しかも、大柄の男性はドスドスと部屋を歩き回りながら、ずっとヒンドゥー語らしい言葉で怒鳴っているんですよ。それを見た瞬間に、「あ、俺終わったかも」と思いました。
――その後、いったいどうなってしまったのでしょうか。
レオ 結果を先に言うと、お金を渡したら部屋を脱出できたのですが、あの瞬間は生きている心地がしませんでした。
ずっと怒鳴っているから、Google翻訳も役に立たないし、そもそも翻訳できたところで会話が通じるのかも分からない。理性的な対話は無理だと判断して、僕も“狂ったふり”をすることにしました。男に負けじと大声で叫んで、壁を叩いて、とにかく「こいつヤバいやつだ」と思わせようとしたんです。しばらくしたら、謎のおばあさんが部屋に入ってきて、呆れた顔で解放してくれました。あのままあの部屋にいたら、一体どうなっていたのか……。想像したくもないです。
――それは、恐ろしい経験でしたね。
レオ しかもその後、通りすがりのインド人にスマホを盗まれてしまって。多分、ビクビクしている僕を見て「こいつならイケる」と思われたんでしょうね。海外のこういう地域では「弱っている人間は格好の獲物」なんだと痛感しました。
――他にも、怖い経験があったら教えていただけますか。
レオ すぐに思いつくのは、トルコの首都・イスタンブールでとんでもないぼったくりにあったことですかね。まず、トルコはぼったくりが多いと聞いていたから、僕なりに警戒はしてたんですよ。それなのに、まんまと引っかかってしまって。
最初に声をかけてきたのは、人の良さそうなおじいちゃんでした。白髪で小柄な彼は「もしかして日本人? 僕、日本が大好きなんだ!」と流暢な英語で話しかけてきて。おすすめの場所を聞いたら、地元の人しか知らないような穴場のレストランを教えてくれて、一緒に飲みにも行きました。そこでも、トルコの面白い話を聞かせてくれたり、昔話をしながら孫の写真を見せてくれたりして、「親切な人と出会えてよかったな」「これぞ旅の醍醐味だな」なんて思っていたんです。
1軒目、2軒目は楽しく過ごしていたのですが、3軒目で突然おじいちゃんの様子が変わって……。
