海外志向が強く、勢いでタンザニアのザンジバル島に渡った鶴本詩織さん(27)は、そこで運命の出会いを果たす。相手はマサイ族の戦士、ジェームスさん。交際わずか10ヶ月で結婚した国際結婚カップルだ。

交際わずか10ヶ月でマイサ族のジェームスさんと結婚した鶴本詩織さん

20歳まで自分の顔を見たことがなかったマサイ戦士

「最初に鏡で自分のことを見た時、自分のお父さんだと思った」と笑うジェームスさん。マサイの村には鏡がなかったため、自分の顔を初めて見たのは出稼ぎのためにザンジバルに出てきた20歳頃だったという。

 そんなジェームスさんは現在、TikTokで70万人以上のフォロワーを持つ人気者。鶴本さんによれば「朝の支度も私より長い。ずっと鏡を見てる」と夫の様子を明かす。

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 マサイ族特有の髪形やアクセサリーを身につけるジェームスさんは、「顔は調子が悪くても変えられないけど、髪は変えられるから」とこだわりを語る。

「ジェームスと一緒に歩いていると視線を感じることは多い」と鶴本さん。「ネガティブな反応はほとんどなくて、ビックリされるとか、あとは、何かのイベントのコスプレだと思う人もいる」と周囲の反応を話す。

 しかし、二人の結婚生活は文化の違いによる衝突も少なくなかった。「マサイ村での生活では夫婦の時間がまったくない」と鶴本さんは振り返る。マサイ族には男女一緒にご飯を食べないルールがあり、男性は朝から夕方まで放牧や長老とのミーティングで家を空けるのが日常だという。

現在は日本で暮らしている

 また、マサイ族は男女の立場に大きな違いがあり、こうした価値観の違いに、当初は「なんで?」という疑問が止まらなかったという。

 それでも現在は日本を拠点に、お互いの文化を尊重しながら生活している。

「マサイ村に行った時、自分がどれだけ“もの”に頼って生きてきたか改めて思い知らされて、無力感を覚えました。同時に、ものがなくても楽しく生活できることに気付けたのは、すごく大きかったです」と鶴本さんは異文化での経験から得た気づきを語る。

 故郷から遠く離れた日本に住みながらも「マサイとして生まれてきてよかった」と語るジェームスさんの姿からは、自分のルーツに対する誇りが感じられる。

写真=石川啓次/文藝春秋

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