結婚とは、赤の他人であったふたりが、自分たちが唯一無二の関係であると思ったり、それが大いなる勘違いであったと気付いたりしながら、格闘する過程でもある。なぜ、人は人と一緒にいることを選ぶのか? 夫婦、家族にかぎらず、人生にパートナーシップは必要なのか?
その問いとともに、内田也哉子さんが様々なゲストとパートナーを考える連載「Mirror River」の第3回に愛妻家で知られる所ジョージさんが登場。『週刊文春WOMAN 2025夏号』より一部を編集の上、紹介します。
世の中は面白いことに溢れている
生まれたときに既に父の姿はなく、母は仕事で留守がち。自らは19歳で結婚して30年経つものの内田也哉子にとっていまだによくわからないのが、パートナーシップとは何か──。今回は愛妻家として知られるこの人に聞いてみよう。
内田 はじめまして。内田也哉子と申します。
所 私なんかに何を聞こうっていうの?
内田 お目にかかりたいと思っていたんです。私の夫は本木雅弘といいまして、1994年の元日に放送されたNHKのドラマ『坊っちゃん─人生損ばかりのあなたに捧ぐ─』で所さんと共演しています。所さんは山嵐の役をされたんですが、覚えていらっしゃいますか?
所 そうそう、本木さんが坊っちゃんで、四国までロケに行ったね。
内田 結婚前年のことで、本木が所さんに会えるのを楽しみに出かけたのをよく覚えています。
所 あらまっ。
内田 ロケ先にご家族もいらして、所さんはお嬢さんを「うちの娘、サイコーなの、すごいわがままで天才なんだよ」と紹介されたとか。本木はそれが忘れられないと言うんですよ。「『わがままで天才』というのは変に謙遜しないで、愛情に溢れていて、絶妙な言葉選びに所さんの人生観が詰まっている」と、それからしばらくは所さんの話題で持ちきりでした。
内田也哉子が訪ねたのは所ジョージさん(70)のモノづくりの基地「世田谷ベース」。車やバイクに手を加えたり、時計、フィギュア、雑貨やTシャツをデザインしたり、所ジョージ的アイディアを実現させる場所だ。自ら耕した畑では野菜や果物も育て、北野武さん、奥田民生さんら多くの芸能人が素顔で遊びに来る。近所の文通仲間に、故・大江健三郎さんがいた。
所さんは1977年、シンガーソングライターとして『ギャンブル狂騒曲/組曲 冬の情景』でデビュー。「ドリームジャンボ宝くじ」や「ゆうパック」などCMソングも多く手がける。わずか数秒で終わる曲も。
所 でも代表曲とかヒット曲とか思い浮かばないでしょ。ないからね。皆さんが日記を書くとき、こんなに楽しかったとか、つまらなかったとか、その日に思ったことを書くでしょ。それと同じで、その日に感じたものを歌にしているだけなんですよ。これは売れない。