かみさんは面倒くさいから、「このペーストは何?」と聞くと…

 だから私は幸せなんだもん。家に帰るとご飯が並んでいることが幸せなのではなくて、カタカタ包丁で切る音とか、ぐつぐつ何か煮ている湯気とか、何か焼いている香りとか、食事の1時間前からずっと幸せを感じるの。それをただ待っているのではなく、かみさんの周りをウロチョロする。「何を切るわけ?」とか「この葉っぱは何?」とか。たとえ興味がなくてもちょっかいを出す。

 

内田 ……奥様としては邪魔かもしれない。

 そうそう。かみさんは面倒くさいから、「このペーストは何?」と聞くと、「うんこだよ」と答える。

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内田 私は生活の中でギクシャクするようなことがあると、カチンとくるんです。夫婦や親子がどうしてそうなってしまうんだろうと、考えてしまうことがあります。

 カチンとくるのは、自分はこう思っているのに相手は違うって思うからでしょ。でも「自分自身」と結婚したわけではなく、違う個体と結婚したのだから、違って当たり前じゃない。ましてや親子なら世代も違うし、考えていることは違いますよ。

 例えば、これ(空きビンに無造作に挿した草花)は見ようによってはただの草なんですよ。今朝、畑で草むしりをしていたらルッコラが花をつけていた。草に紛れて見逃しそうな花だったけど、摘んで洗ってビンに入れて置いてみた。お昼ご飯の後にそれを眺めながら食べるプリンのおいしさといったらないよ。この花のために半日かけたうれしさがある。かみさんもそう思ったかどうかわからないけど、たぶん思ってないけど、でもそれでいいんです。

朝、畑で見つけたというルッコラの花がテーブルに。花瓶にはジャムの空きビンを利用。

内田 なるほど、そういえば本木も「夫婦でも家族でも人それぞれ違うから面白いんだ」とよく言います。

◆青山に住んでいた奥様の家に居候していたら週刊誌に「同棲」と書かれ結婚したエピソードや、奥様のためにブンタンを400キロ毎年剥いた話、黒澤明監督や北野武さんらとの交友など、全文は発売中の『週刊文春WOMAN 2025夏号』で読むことができます。

題字&イラスト&写真:内田也哉子 対談構成:小峰敦子

うちだややこ/1976年生まれ。東京、ニューヨーク、ジュネーブ、パリを転々として育ち、現在は東京、ロンドンの二拠点暮らし。文筆家、戦没画学生慰霊美術館「無言館」共同館主。初恋の人と平成7年7月7日に結婚し今年で30年。子どもは男、女、男の3人。日曜朝のEテレ『no art, no life』で語りを担当。最新刊は『BLANK PAGE 空っぽを満たす旅』(週刊文春WOMANの連載を収録/文藝春秋)。今夏、「無言館」の地元長野の信越放送制作『戦後80年 内田也哉子 ドキュメンタリーの旅「戦争と対話」』が放送される。

ところじょーじ/1955年生まれ、埼玉県所沢市出身。所沢のジョージということで宇崎竜童が命名。シンガーソングライター、俳優、声優、司会者、画家、クリエイターなどとしてマルチに活躍。結婚44年、子ども2人、孫2人。「好感度調査 男性タレント」(ビデオリサーチ社)で首位12回。日本テレビ系『はじめてのおつかい』『1億人の大質問!? 笑ってコラえて!』、テレビ朝日系『ポツンと一軒家』『大改造!! 劇的ビフォーアフター』、NHK総合『所さん!事件ですよ』などの名司会もお馴染み。

この記事の詳細は「週刊文春電子版」でお読みいただけます
内田也哉子×所ジョージ ちゃんと引っかかる|Mirror River ミラー・リバー journey 3

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