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広島・ジョンソンのユニフォームの脇の穴に隠された意図を探る

文春野球コラム ペナントレース2018

2018/07/11
note

可動域について考えてみた

 とは言え私はまだあの穴と和解した訳ではない。「普通、脇に穴は開いてない」という固定観念から逃れられない。着物における身八つ口のようなものかと自らを納得させてみるが、着物の場合は脇が見えないよう所作に気を付けるものである。ユニフォームはその点お構いなしだ。アンダーシャツが見えるのはまだいい。問題はアンダーシャツが袖なしだった場合、地肌が丸見えになることだ。せめて大きく振りかぶらないで欲しいと願うが、大きく振りかぶる投手にこそ脇の穴は必要であろうから悩ましい。

 肩の可動域がと言うならば、いっそのことユニフォーム自体を袖なしにしてみてはどうか。MLBのプロモーション「ターン・アヘッド・ザ・クロック」では、“未来のユニフォーム”という設定で袖なしユニフォームを着用している。日本でも過去に中日やロッテが袖なしユニフォームを採用した時期があった訳だし、非現実的な話ではない。

 第一可動域可動域と言うが、足を大きく上げるフォームの永川勝浩や小川泰弘(ヤクルト)などの足の可動域はどうなるのか、股下に穴を開けなくていいのか……などと思考が錯乱してきたところで気が付いた。時代は変わったのだ。今や脇の穴は普通の光景であり、個人が穴のあるなしを自由に選べる時代になったのだ。違和感を持つ私の方が石頭なのだ。

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なぜジョンソンは脇に穴を開けたのか

 打ちひしがれた気持ちで現在のカープ選手を見てみると、やはり投手・野手を問わず穴あきを選択する選手の方が圧倒的に多い。ところがここで脇事情に変化がみられた選手がいる。来日4年目の左腕、クリス・ジョンソンである。

 ジョンソンのユニフォームには昨年まで穴が開いていなかった。MLBでは脇開け加工はほぼ見られないため外国人選手が脇穴ユニフォームを着ることは珍しく、ジョンソンもその例に漏れなかった。ところが今年3月31日の開幕第2戦に先発したジョンソンの脇には穴が開いていた。ユニフォームはほぼ選手自身のオーダーにより作られるというから、脇穴はジョンソン自らの意思で開けたのだろう。しかしなぜ来日4年目の今年になって、ジョンソンは脇に穴を開けることを選択したのだろうか。

 来日1年目から2年連続2桁勝利を挙げ、一昨年には外国人投手として52年ぶりとなる沢村賞を受賞したジョンソン。しかし昨年は度重なる不調で離脱を繰り返し、6勝3敗に終わった。ジョンソンにとってはさぞ悔しいシーズンだったに違いない。

 そのためジョンソンの今シーズンにかける意気込みは並々ならぬものがあった筈だ。脇の穴はその決意の表れなのかも知れない。ただ、真面目な顔をしてバティスタのドレッドヘアをいじったり、お立ち台でスラィリーのマイクを奪い取ったりするお茶目なジョンソンのことだ。これはもしかすると「ツッコミ待ち」なのではないだろうか。

 先日7月4日に来日通算40勝目を挙げ、バリントンに並ぶカープ外国人最多勝利となったジョンソン。誰か次回勝利のヒーローインタビューの際、「今年から脇に穴が開きましたね!」とつっこんでくれないだろうか。その時ジョンソンがどんな反応を示すのか、私は今から心待ちにしている。

ジョンソンの多様性 ©オギリマサホ

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