数カ月前から台詞を丸暗記

 続いて観客から、原住民にはプロの役者が少ないため、16ある他の部族の役をしなければならないこともあると思うが、今回の作品ではどうだったかという質問が出ると、スー監督がこう答えた。

「兄弟の兄の役者はタロコ族出身でしたが、弟と父親はタロコ族ではなかったので、撮影の始まる数カ月前からタロコ族の言葉を丸暗記しなければなりませんでした。それでも、故郷でこの映画を上映したときには、ちょっと言葉が変という感想も出ていました。実際には、世代が下ると母語である原住民の言葉がうまく話せない人も増えてくるので、原住民の言葉と中国語を混ぜて話すようになっています」

スー・ホンエン監督 提供:台湾映画上映会2025

 最後にスー監督が「台湾で上映した時と今日の上映では観客の反応が違って新鮮でした」と述べると、張准教授が台湾映画の魅力についてこう語った。

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「今日上映されたのは原住民の映画ですが、台湾映画は他にもLGBTQであるとか、マイノリティの世界を描いて多様な台湾社会を可視化していると言えると思います」

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