山に生きる人々が遭遇した奇妙で不思議な、ときに恐ろしい体験──。「山怪」シリーズとして知られる田中康弘氏の著作『山怪朱』が、水谷緑氏の手によりコミカライズされた。
これまで『まどか26歳、研修医やってます!』や『こころのナース夜野さん』など医療ものを得意としてきた水谷氏が山の怪異に挑む『山人が語る不思議な話 山怪朱』(小学館)は、現代の遠野物語とも呼べる一冊だ。
どのようなきっかけでこの企画が始まったのか、担当編集の小学館・加茂伸幸さんに聞いた。
医療ものから山の怪異へ…水谷緑氏の新たな挑戦
「『こころのナース夜野さん』の連載を水谷さんが終えられた時に、『医療ものじゃないジャンルに挑戦したい』とおっしゃっていました。その頃、私がモキュメンタリーにハマっていたので、これまで水谷さんが描かれてきた医療・看護師ものをよりエンターテインメントに振って、ホラーものに挑戦するのはどうでしょうと提案したところから始まりました」
そんな中、編集長が「山怪」シリーズのコミカライズを加茂さんに提案。水谷氏に話をすると、実は彼女自身も原作のファンだったという幸運な偶然があった。
「『山怪』は別の出版社でもコミカライズされていますので断られていても不思議ではないのですが、ちょうどそちらの連載が終わっていました。また、『山怪朱』はコミカライズされていなかったこともあり、原作者の田中康弘さん、出版社の山と溪谷社さんにも前向きにご検討いただいたといった感じです」