高尾山や奥利根、魚沼などに取材へ行くことも…
作品作りの過程では、実際に各地の山に取材に行くこともあるという。高尾山や奥利根、魚沼など、アクセス可能な場所は直接訪れ、難しい場所はリモートや電話で話を聞くという。
「中には原作『山怪朱』が発売された後にお亡くなりになった方もいらしたりして、“失われつつある山怪”を実感しています」と加茂氏は語る。
猟師が持っていたレジェンド漫画家の直筆色紙に驚き
「コミックス第1巻に収録されている話ですと、奥利根の猟師・高柳盛芳さんのところに伺った時は、新鮮なマイタケの炊き込みご飯をご馳走になったり、切り傷にいいよと熊の油をいただいたりしました。
その高柳さんが、『サスケ』や『カムイ伝』をお描きになった漫画家の白土三平先生とお知り合いで、ご所有の直筆の色紙を見せていただいたりもしました。白土先生は編集部でも会ったことのない人が多いレジェンドですので、大変驚きました」
山の“リアル”と“不思議”が融合した本作。あらためて、その見どころとは?
「都内からもアクセスできる高尾山から始まり、最近起きた話から昭和初期の話もあったりと、場所も時代も幅広い『山怪』の話ですが、水谷さんが漫画に描くことで怖い話がより怖く、郷愁溢れる話やほっこりする話がより親しみやすくなったのではないかなと。怖いだけにとどまらず、読んだら読んだ分だけいろいろな味わいが楽しめる作品になっています」(加茂さん)
山と人間の交わる境界に潜む「山怪」たち。水谷緑氏の細やかな筆致で描かれる彼らの姿は、日本の自然と文化が生み出した貴重な民話の現代的継承となるだろう。


