「僕はそういう能天気なところがあるんですよ」

 80年11月、三浦さんは山口百恵さんと結婚。28歳の時だった。スクリーンから飛び出たようなゴールデンコンビの結婚は日本中から祝福されたが、結婚後も報道合戦が繰り広げられ、家から出るのさえ大変な時期が続いた。同時に三浦さんは、俳優としてのこれからを試行錯誤することとなる。

 そこへ意外な人物が声をかけてきた。昭和の大スター、石原裕次郎だ。石原プロ製作で、一世を風靡したアクション刑事ドラマ「西部警察 PART II」(82~83年)への出演依頼だった。渡哲也演じる大門にも負けぬ角刈りにして登場した時はかなり驚いたが、戸惑いはなかったのだろうか。

「実際には10ヶ月だけでしたけど、ものすごく楽しかったです。渡さんのこともすごく好きになりましたしね。あの大門軍団の無茶苦茶な感じは、中に入らないとちょっと経験できないですから。

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 最初は半年間の予定だったんですが、そろそろ6ヶ月という頃に渡さんに『トモ、もうちょっとやんねえか?』って言われて。『いや、無理ですよ。余命宣告されている設定ですから』って言っても、『なんとでもなる。大丈夫だから』って。すごいでしょう?(笑) 『西部警察』は荒唐無稽なドラマでしたが、おかげで僕もそこから3ヶ月生きていました」

フォトコールに応える三浦さんらキャスト陣 ©Kazuko Wakayama

 その頃、三浦さんは30代も中頃となり、父親になった。

「結局、俳優としてうまくいかない時代っていうのは30代から40代ぐらいまで続くんですけどね。自分ではどうにもならない部分があるというか、まあそういうものなんだ、と。あまり気にしても仕方がないし、子育てが楽しかったのもあって、仕事に対する不安感みたいなのは何も感じなかったんです。僕はそういう能天気なところがあるんですよ」