体がねじ切れんばかりのフルスイングを見せる19歳の石垣雅海が、表舞台にのし上がってきた。7月12日に青森県の弘前市運動公園野球場で開催されたフレッシュオールスターゲームで豪快な一発を放ち、MVPを獲得したのだ。

今年のフレッシュオールスターで最優秀選手賞を獲得した石垣雅海 ©時事通信社

 この朗報を、私はパリで聞いた。オリンピック・パラリンピックは2020年東京大会の4年後にパリで行われることが既に決まっている。メイン会場はどのような場所なのか、フランス国民の五輪に対する意識は高いのか……。ここ数年は都市とスポーツの関係性を取材するため欧州各国を巡ることを慣例としており、今回も自費で渡航していた。

「ここは1974年に巨人のV10を阻止した時の名古屋か?」

 ところが7月7日に降り立ったとき、パリはオリンピックどころではなかった。サッカーのワールドカップ(W杯)ロシア大会で、フランス代表チームが20年ぶりの優勝に向けて快進撃を続けていたからだ。

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 10日の準決勝でベルギーを1ー0で下した時は、凱旋門から伸びるシャンゼリゼ通りは数10万人の人で埋まっていた。発炎筒を振り回し、ビール瓶を道路や壁にたたきつけて割るなど大騒ぎ。市庁舎前などの広大な広場も立錐の余地もなく、道行く車はクラクションを鳴らし続ける。それらの最寄り駅は地下鉄も安全のため停車せず、すっとばしていくほどだった。

「ここは1974年に巨人のV10をドラゴンズが阻止した時の名古屋か? それとも翌75年にカープが悲願の初優勝を遂げた時の広島か?」

 瞬時にこう思ってしまうのは、日本のプロ野球ファンの悲しい性。いずれにせよ、日本代表の侍ブルーが勝った時に渋谷のスクランブル交差点や大阪の道頓堀界隈で見られる騒動は、パリの喧噪に比べれば町の片隅の公園で数人が騒いでいるようなもの。「渋谷、ちっちぇー」を、はからずも実感してしまった。

 石垣のMVP獲得は、そんな時に届いた。「ドラゴンズにもゴールデンエイジの星が誕生した」。私は思わずガッツポーズした。