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夜のW杯“現地報告” モスクワ「ナンパ天国」のファンタジスタたち

“男の中の男”プーチンは「問題」をどう見ているのだろう

2018/07/01

離婚率80%と「出会いを求める」理由

 ロシア人女性が海外の男性に憧れを抱く理由はいくつかある。

 人口の男女比が46対54と女性余りにあること。ロシア人男性の平均寿命が67.58歳と女性に比べて10歳以上短いこと。さらには女性の4人に1人が男性からのDV経験があり、年間1万4000人の女性がDVによって死亡しているという深刻な内情もある。アルコール依存症の問題を抱える男性や、仕事に就こうとせず妻の収入を当てにして暮らす男性も少なくない。そうした諸々の問題が80%の離婚率という異常な数字に表れてもいる。自国の男性に見切りをつけて、海外の男性との出会いを求めるのは自然な流れかもしれない。

昼もすごい

 加えて、ワールドカップ開幕のまさにその日に政府の増税案が発表され、2019年1月から消費税が18%から20%へ引き上げられることになった。年金の受給開始年齢の変更案も合わせて発表され、男性は60歳から65歳に、女性は55歳から63歳に段階的に引き上げられていくという。いずれもこれから国会で審議されるが形式的なもので、ほぼ決まったようなものだ。世間の目をそらすかのように翌日の報道はワールドカップ一色。ロシアがサウジアラビアに5-0の勝利を収めたことばかり大々的に報じる国営メディアに、国民は完全にバカにされた格好だ。

試合観戦ではなくウォッカを飲みにきたそうです

 こんな欺瞞に満ちた国から、先行きの見えない泥舟のような国から、一刻も早く逃げ出したい。それを実現させるひとつの手は国際結婚だ。そう考えるロシア人女性は少なくない。

イタリア不在で勢いづいている国は……

 彼女らに言わせると、ファッションセンスが抜群で、女性の扱い方に手慣れているイタリア人男性が理想らしいのだが、残念ながら今大会イタリアは欧州予選で敗退しワールドカップに出場していない。

 イタリアの不在で俄然勢いづいているのが中南米のメキシコ、ブラジル、アルゼンチンの面々だ。底なしに明るくオープンな性格は、ロシア人女性にとって新鮮で魅力的に映るのだろう。普段は眉間にしわを寄せがちな彼女たちの表情が自然と和らいでいく。冷えた心を太陽のような笑顔が解かしていくわけだ。

 

 喧騒のニコリスカヤ通りで、そんなラテンアメリカ男性とロシア人女性の生態を観察していると、おおむねこんな感じである。

 ブラジルの男性の攻めの手は速い。まじめな日本人男性がロシア語の丁寧なほうの挨拶「ズドラーストヴイチェ」で礼儀正しく手順を進めるところを、どこで覚えたかカジュアルなほうの挨拶「プリヴィェット」で一気に懐に入り込んでいく。つないでつないでのパスサッカーではなく、チャンスと見るや自らドリブルで切り込みシュートまで持ち込む。シュートが外れてもめげることなく、すぐさま切り替えて次の女性に声をかけていくカナリア軍団は、夜のワールドカップでも世界最強である。

「プリヴィェット」で一気に懐に入り込んでいく

 サンパウロ出身のルーカスいわく「スタジアムまでの道をたずねるロシア語より、君きれいだねってほめるロシア語のほうがよっぽど大事だよ」とのこと。

夜のカナリア軍団

ソンブレロとテキーラで対抗するメキシコチーム

 そんな王者ブラジルを人気で上回るのがメキシコだ。秘密は遠目にも目立つソンブレロで、一緒に記念撮影をしたいロシア人女性の順番待ちの行列ができるほど。通りで人だかりができているとだいたいがその中心にソンブレロがある。人柄が温和で押しがそこまで強くないところも好印象なのだが、きれいな女性との撮影が回ってくると、そのときだけは自分のスマホを取り出して撮影を始め、あわよくば連絡先を交換しようとするのはご愛嬌である。「ちょっとかぶってみない?」と優しく声をかけるその一方で、懐ろにはテキーラを用意している。じつは危険な国である。

 チワワ出身のミゲルいわく「テキーラ、これが最後の1本なんだ。まあ、なくなったらそこのスーパーで買うから問題ないよ」とのこと。

「ちょっとかぶってみない?」
冷えた心を太陽のような笑顔が解かしていく