薄暗い隅のほうへ誘導するアルゼンチンの戦術
前半戦で味噌をつけたのがアルゼンチンだ。サッカー連盟が選手やジャーナリスト向けに配布した冊子の中に「ロシア人女性攻略法」なるページがあり、各方面から批判を受けて謝罪するはめに。なかなか調子の上がらないメッシとシンクロするようにファンもまた元気がなく存在感が薄い印象なのだが、通りのど真ん中で堂々と口説くブラジル人に対し、薄暗い隅のほうへ女性を誘導し、時間をかけて粘りに粘って口説き続ける。メッシの調子が上向いていればもっと堂々と口説きやすかったのかもしれない。
ブエノスアイレス出身のアレハンドロいわく「例の攻略法は一応ネットで見たけど、イニシアチブを取ろうとか、ネガティブなことは言わないとか、もう知ってることしか書いてなかったよ。メッシ? その話はいいじゃない」とのこと。
ロシア人女性の名誉のために言っておくと、当然ながらすべての女性が外国人にホイホイついて行っているわけではない。楽しい時間を過ごして、最後の最後はヒラリとかわしている女性が大半だ。本大会では南米ウルグアイに0-3と押し込まれたロシアだが、女性はというと守りが堅く、なかなかゴールを割らせない。それでも東の空がうっすら白んでくる時間帯ともなると、ハメを外している者がいることはいる。
「ナターシャ」なる蔑称が、問題の傷口を広げている
こうした状況を苦々しい思いで見ているロシア人男性は多い。外国人とよろしくやっているロシア人女性を「ナターシャ」と侮蔑的に呼び、批判めいた動画や画像をネットにさらす心ない者もいる。それがまた問題の傷口を広げている。
この問題に対しドミトリー・ペスコフ大統領報道官は「ロシア人女性は自己管理できるはずだ。彼女たちは世界一の女性なのだから」と各人の判断に任せるとしたものの、ネットでは「この調子では2019年3月には“ワールドカップチルドレン”の誕生に沸くことになるだろう」との皮肉の声が上がっている。
ロシアの女性は美しく、誇り高い。気難しい面もあるが、一度心が通じ合えば献身的に尽くしてくれる。世界一と言ってもいいかもしれない。であるならば、その世界に誇るロシア人女性をもっと大切に扱い、彼女たちがこれからも住み続けたいと思える国にすべきではないのか。“男の中の男”プーチン大統領はこの問題をどう見ていることだろう。
写真=栗田智