妻から何も聞いていなかった両親は絶句して、「あの子がこんなことになっているとは思わなかった」と言い、帰っていきました。
離婚後も両親のお金で推し活
結局、田舎の両親に説得され、妻はしぶしぶ離婚に応じることになりました。娘は妻と住むことになりましたが、成人しているため、養育費の支払いはありません。
妻は最後まで「自分は推しに貢献しているだけ」と言い張っていて、Aさんへの謝罪やねぎらいの言葉はありませんでした。
離婚後、「妻と娘は両親のお金で推し活を続けているらしい」という噂がAさんの耳に入ってきました。
本人には悪いことをしている認識がない
このように、一見ほほえましい趣味であっても、度を超えると家庭生活を崩壊させて、離婚に至ってしまうことがあります。推し活やペット、健康オタクなど、肯定的に見えるものであっても、暴走して家族を悩ませ家庭生活を壊せば、それはモラハラといえます。
こういったケースが難しいのは、本人には悪いことをしている認識がない点です。「経済を回す」「推しに貢献する」といったポジティブな言葉にとらわれていて、目の前の家族がつらい思いをしているということに意識が向かなくなっているのです。SNSでファン活動をアピールするのが当たり前になっていて、見栄を張るために自分の生活水準を超えた推し活をしてしまっている場合もあります。
こうなると、もはや話し合いができる状態ではありません。
「推し活が原因で離婚なんて、世間に笑われそうで言えない」とおっしゃる方もいますが、どんな理由であれ、趣味が家庭を侵食して、尊厳や生活を踏みにじられていると感じるなら、離れることも選択肢として考えた方がよいと思います。
「うちの家族はちょっとおかしいかも」と思ったら、まずは誰かに相談してみてください。意外と同じ悩みを抱えている人がいるかもしれません。そして、必要であれば弁護士への相談をおすすめします。
弁護士
北海道札幌市出身、中央大学法学部卒。堀井亜生法律事務所代表。第一東京弁護士会所属。離婚問題に特に詳しく、取り扱った離婚事例は2000件超。豊富な経験と事例分析をもとに多くの案件を解決へ導いており、男女問わず全国からの依頼を受けている。また、相続問題、医療問題にも詳しい。「ホンマでっか!?TV」(フジテレビ系)をはじめ、テレビやラジオへの出演も多数。執筆活動も精力的に行っており、著書に『ブラック彼氏』(毎日新聞出版)、『モラハラ夫と食洗機 弁護士が教える15の離婚事例と戦い方』(小学館)など。
