「“スタヲタ”という呼びかたは、むしろファン以外の方が…」
20年来の嵐ファンであるBさんは、“ジャニヲタ”という呼び名だけでなく界隈の用語を含めて他の言葉では置き換えられない、と主張します。
「自分のことは“ジャニヲタ”だとしか思えませんし、ファンの間で使われる『担(~のファン)』や『自担(自分が応援するタレント)』などの用語も、古くからのジャニーズファンの間では“推し”よりもしっくりくる言葉です。
たとえばジャニーズのアイドルに『ケミ(相性)』『マンネ(末っ子)』といった韓流ワードを使っている人もいますが、私はなんだかゾワゾワします。それらはあくまで韓流アイドルの世界で生まれた言葉なので、聞いていて違和感があるのです。
ほとんどのファンが“ジャニヲタ”という名称を使い続けているのも、その言葉でしか表現できない何かがあるからだと思います。その文化や世界観を伝えるために、せめてファンの呼びかただけでもこのままにさせてほしいです」(Bさん)
筆者の観察でも“スタヲタ”と名乗っているファンはかなりの少数派で、時には揶揄の言葉として使われていることもあるのが現状です。
「“スタヲタ”という呼びかたは、むしろファン以外の方が使うことが多い印象です。ファンの中には、timeleszオーディションを観て彼らを好きになった“タイプロ新規”の人を揶揄するかたちで『あの人はジャニヲタじゃなくてスタヲタ。だから流儀が違う』というように新参者扱いする人もいます。どちらにしてもネガティブなニュアンスがあり、定着する気配はありません」(前出Bさん)
「『私、旧ジャニのファンなんだけど……』とぼかしたり」
Bさんも感じているように、“ジャニヲタ”と“スタヲタ”は単純にイコールで結ぶことはできません。その点からも、呼びかたを変えることに難色を示す人は多くいました。
「誰にでも“ジャニヲタ”と名乗ることには、若干のためらいがある」というCさんは、相手によって呼称を使い分けていると言います。
「ジャニーズ問題を重く捉えている相手には、『私、旧ジャニのファンなんだけど……』とぼかしたり、ちょっと予防線を張ることもあります。でも、気心の知れたファン同士では“ジャニヲタ”のままですね。
自分のことを“スタヲタ”だという人は、私の周りにはまだいません。タレントさんの所属の話で『TOBEへ行ったんだっけ? STARTOのまま?』みたいに新事務所の名前が出ることはありますが、そのくらいですね。
そういえば、『ジャニーズの名前なんて消せ!』という人ほど、『あの人はジャニヲタだから』とか『ジャニタレの映画』というように“ジャニ”という言葉を使っていたりもします。STARTOのタレントさんを“スタタレ”と呼ぶ人も見かけないし……結局いちばん通じて、それでしか表せないのが“ジャニ”なんだと思います」(Cさん)
Cさんのように「この名前でしか表せないものがある」「他の言葉では通じない」ということで“ジャニーズ”を使い続けているファンも多くいました。
「ジャニーズ系の男の子」といった表現はほとんどの人が同じイメージを描けますし、これを代替できる言葉はまだありません。
ファンの中で、故ジャニー喜多川氏の性加害問題について胸を痛めていない人は皆無に等しいと思います。それでも「自分の好きなものを示すしっくりくる言葉」が他にないという感覚が根強くあるのが、正直なところではないでしょうか。
断ち切るべき残念なことを印すためでなく、「タレントたちが築いてきたコンサートや舞台、その世界観、また彼ら自身のファンであること」を表すために、ファンは“ジャニヲタ”を名乗るのでしょう。
