6月27日の朝、「座間9人殺害事件」の白石隆浩死刑囚(34)の死刑が東京拘置所で執行された。

 2020年7月から9月にかけて、当時立川拘置所にいた白石死刑囚と11回面会したノンフィクションライターの小野一光氏が当時の様子を振り返る。

白石死刑囚

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「なぜ殺さない女性がいたのですか?」と尋ねると

 8月12日の7回目の面会で、殺さなかった彼女(Xさん)とどんな付き合いをしていたのか尋ねると、白石は「その女性のオゴリでご飯を食べたり、あと、ホテルに行ったりとか、普通に付き合ってましたね……」と語る。私としてはもっと詳しく話を聞きたかったが、あまり話したくなさそうな雰囲気を醸し出していたため、それ以上は深入りしなかった。

 そして9月2日の10回目の面会で、ふたたびXさん絡みの話題を出したところ、白石から驚きの言葉が飛び出すのである。

 彼が被害者について、1人目だけは情が移ってかわいそうに思ったが、「2人目以降については、正直、なにも思ってないです」と断言したことを受け、私はXさんとは言わずに、「なぜ殺さない女性がいたのですか?」と尋ねた。そこで白石は「おカネになりそうだったからですね。その女性のオゴリでご飯を食べたり、ホテルに行ったりしてましたから」と、7回目の面会とまったく同じ内容の返答をしてきた。だが、それに続いて、新たな情報を出してきたのだ。

「部屋に入れて殺してないのは、彼女を含めて3人います。1人目は2カ月付き合ったその女性(Xさん)。2人目は部屋に10日間泊めて、飯をオゴってもらったり、生活費を出してもらったりした女性(Yさん)。3人目は口説いたけど、私に魅力がなくて、口説く力が足りなくて、そのまま帰ってもらった女性(Zさん)です」

 3人の生存者がいたとの情報に、内心では驚きを抑えられなかった。だが、この情報についてもその場で詳細は尋ねず、細心の注意を払って、次回の面会までとっておくことにした。

 そして9月9日の11回目の面会の日、白石はYさんが関西からやって来た、自殺志願者の22歳くらいのキャバクラ勤務の女性であることと、Zさんは実家が裕福な女子高生だったことを明かしたのである。

 そこで彼は、私が予想もしていなかったことを口にする。