親は教育熱心で、彼は岩手で小学校受験も中学受験も経験している。そのため本人も勉強して有名大学に進んで当然という価値観が内面化されており、高校卒業時と一浪時には実力不相応な有名大学ばかり受け二浪する。

 浪人したものの、まったく勉強しなかった。二浪時には有名大学以外も受けて、専修大学には受かった。麻雀は一浪時から始めた。せっかく合格した大学だが、彼にとって満足できる進学先ではなかったためモチベが上がらず結局は中退する。だが在学中、彼のビジネスは高校時代よりも大きくなる。

「遊戯王カードは小学生からプレイしててコレクターでした。当時150万円もする世界に数枚しかないカードまで持ってました。今でも持ってたら1000万円以上してもおかしくないので、売ってしまったことを後悔してます。そんな人間だったから、カードの市場価格と実店舗価格に大きな落差があることに気づいたんですよね。それからはブックオフに片っ端から電話をかけて高額カードを売っているか確認し、置いてある店を片っ端から訪問していきました。たとえば35万円のカードが10万円で売られてたりとか最大で数十万円の価格差があったんですよ。そういうカードを見つけたら買って、ヤフオクで売っていったんですよね」

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遊戯王カード ©getty

 そういった高額カードを扱っている専門ショップもある。だが専門ショップは店舗維持の経費がかかるため、乗せる利益が大きくなる。身軽な個人がヤフオクで売るなら経費がかからず販売上有利だった。これが彼のビジネス1号だ。

「ちょうどそのころって仮想通貨が盛り上がってる時期で、つぎからつぎへと草コインが出てました。有名コインは最初にビットコインをちょっと買ったくらいで、それ以降は草コインにハマって毎日のように時価総額が低いものから順に買っていきました。つぎの日にはかならず上がってますから、すぐ売ったこともあるしホールドしたこともあります。当時は買いさえすれば誰でも儲けられました。日本のサイトは扱ってるコインが数種類だけだし、レバレッジをかけられなかったので、バイナンスという中国にあった世界最大の取引所を使ってました」

大学中退時の貯金額は2000万円

 こうして彼は在学4年の末に大学を中退するが、そのときには貯金額が2000万円になっていた。どうだろう。なかなかやり手だと感じられないだろうか。もちろん2000万円という額は、まっとうに就職して30代や40代になったら貯金額としてすごい金額ではない。

 だが、20代半ばという若さで市場のバグを見つけて稼いできたのは立派な実績ではないか。しかし、その資金を使って何かしらビジネスを始めるなり投資によってさらに増やしていこうという道を彼は選ばなかった。

次の記事に続く 「初めて自己肯定感を持てたのが麻雀だった」10代で200万円、20代で2000万円を稼いだ「優秀な若者」→今度は「麻雀で食っていく」と決めたワケ