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酒井高徳が語るW杯の内側「今の日本代表の雰囲気は、2010年に似ている」

酒井高徳が語るW杯の内側「今の日本代表の雰囲気は、2010年に似ている」

2018/07/01

「突破しなくちゃ、見られない世界がある」

 日本はチャンスを得ながらも得点できなかった。だからこそ、残り10分間で「試合を壊した」「サッカーを放棄した」と批判を集めるであろうプレーをして、試合を終わらせなければならなかった。この点について、酒井高徳の考えはこうだ。

「内容から目を背けるつもりはまったくないけれど、それでも僕らが生きるのは結果の世界だから。ブーイングが起きたという事実はあるけれど、グループリーグを突破できる可能性のある道が、自分たちのなかではっきりしているのであれば、それを選ぶのは当然のこと」

「どんな形であっても、グループリーグを突破しなければ、進めない、見られない世界がある。だから、突破したことが一番大事だと、割り切って考えています。どこの国でもグループリーグを突破せずに『今回のワールドカップはよかった』というふうにはならない。国民を喜ばせる、あるいは、国のサッカーを盛り上がらせる、日本を世界に知らしめるためには、ひとつでも上へあがっていくことだと思うから」

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酒井宏樹(左)とは10代から知る仲 ©JMPA

 そのなかで、できたこと、できなかったことをこう表現した。

「今日初めて先発した6人は、西野監督やチームの期待に応えたいと、高いモチベーションでピッチに立った。もちろん、勝ちたかったし、勝ち点を手にしたかった。だから、この結果は非常に悔しいけれど、チームが次のステップへの架け橋になれたのかなと、少なからずは思えている。悔しさやふがいなさと同時に、その気持ちも大事にしたい」

8年前、南アフリカで先輩に学んだこと

 2010年の南アフリカ大会で、決勝トーナメント進出を果たしたことを契機に長友佑都、岡崎慎司、内田篤人、香川真司など数多くの選手が海外へ移籍し、欧州で日本人選手の存在を示すようになった。2011年にドイツへ渡った酒井高徳もその一人だ。グループリーグ突破がもたらすものの大きさを彼は肌で感じている。

©JMPA

 南アフリカ大会のとき19歳だった酒井高徳は、4人のサポートメンバーの一員として、日本代表に帯同している。そこで目にしたのが、控え組の献身的な姿だった。日本代表は初戦カメルーン戦の直前にメンバーを大幅に替え、中村俊輔が先発を外れることになる。中村をはじめとしたベテラン選手や控え組の選手たちが、チームのために懸命に動く姿を目の当たりにし、酒井高徳は自身が「生きる道」を見つけた。

「チームのために100%を尽くす」

 そんな彼の信条は、ドイツでも高く評価されている。だからこそのキャプテンなのだ。