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酒井高徳が語るW杯の内側「今の日本代表の雰囲気は、2010年に似ている」

酒井高徳が語るW杯の内側「今の日本代表の雰囲気は、2010年に似ている」

2018/07/01
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「攻撃に関しては『見よう見まね』で」

 後半14分、柴崎岳が山口蛍へ出したパスを奪われ、展開され、ファールで止めるしかない状態を招いた結果、与えたフリーキックで先制された。マークを外した酒井高徳の自責の念は強いが、チームとしてうまく機能していなかったことが原因とも言える失点だった。

 攻撃面では数度、前線で決定機を摑んだが、ゴールは奪えなかった。

「攻撃に関しては、見よう見まねというか、自分がサイドバックでプレーしているときに『嫌だな』と感じるサイドハーフのプレーを意識していました。でも、いろいろと考えすぎた」

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 不慣れなという言葉に尽きるが、ピッチに立つ以上それを言い訳にすることも、同情されることも、酒井高徳は許さないだろう。

柴崎岳(右)は1学年下にあたる ©JMPA

「イエローカードをもらわないように。このまま終わらせる」

 0―1とリードされ、一度はグループ3位に順位を落としたものの、裏のカード、コロンビア対セネガルでコロンビアが得点したことで、日本は2位に浮上する。このままの状態で試合を終わらせれば、グループリーグ突破が決まる。

「イエローカードをもらわないように。このまま終わらせる」とベンチからの指示が出る。そして日本はボールを自陣で回し続けた。

 セネガルが同点弾を決めれば、3位に落ちるリスクもある。しかし、得点を狙い攻めに出れば、カウンターを食らい追加点を許すというリスクも当然存在していた。また仮に、追加点を狙おうと前へボールを運んでも、相手の得点を恐れた守備陣が押し上がれず、間延びした状態になれば、ポーランドにとっては有利になってしまう。自陣でボールを保持し、試合終了を待つという形ならば、チームとしての意識は統一しやすく、自滅する危険性は下がる、という判断だったのかもしれない。

 ベンチから遠い場所にいた酒井高徳は、こう感じてプレーしたという。

「ボールを回して、相手が来るまで待とうという細かい指示があったのかは、わからない。でも、相手も攻めに来ないし、こっちもボールを前線へ蹴らないという状況から、自陣でボールを繋ぐんだなと察した」

 そして、地元サポーターが数多く詰めかけたスタジアムには、ブーイングが響きわたった。