力不足を痛感した4年前のブラジルW杯
2014年のブラジル大会ではメンバー入りを果たしたが、出場機会はなかった。今度は負傷明けだった内田篤人の代わりになれない自身の力不足を痛感させられた。
「(内田)篤人くんがあれだけの怪我をして、あんなにガチガチにテーピングして、試合に出ている。でも、当時の僕や(酒井)宏樹は、その代りになれる立場ではなかった。日本代表でそれだけの信頼を得られていたのか?というもどかしさがあった」
その悔しさが次の4年間を変えた。所属するハンブルガーSVでは毎シーズン苦しんだ。なんとか残留を続けたが、17-18シーズンはついにクラブ史上初の降格を体験した。
「ひとつの勝利や敗戦で、人生が変わるようなシチュエーションを戦ってきた。どんな毎日を過ごそうとも、大事なのは『最後の結果』だから。ワールドカップで、自分の力を発揮できる、その可能性を1%でも高くするための4年間を過ごしてきた。手ごたえは感じているけれど、結局最後は結果だから」
そう覚悟して、挑んだロシア大会。スタメンの座を手にはできなかったが、「チームのため」という想いに変わりはない。
「ワールドカップのピッチに立ちたいと思う反面、自分の未熟さを感じる日々を過ごしてきた。どんな準備をしてきたとしても、試合に出られなければ、結局、何もできなかったのと一緒。でも、そういう悔しい気持ちはあっても、この大会には自分の欲とか、個人の事情を一切持ってきてはいない。どんな状況でも何分でも、必要とされる仕事をしっかりする。だからこそ、今日はもっといい形で手助けできればよかった。でも、念願じゃないけど、初めてワールドカップの試合に出場できたことは、素直に喜びたい」
「今のチームの雰囲気は2010年のチームに似ている」
試合後は日本人メディアに対応しただけでなく、ドイツ人メディアにもドイツ語で対応した。難しいミッションを課されたワールドカップ初出場は、ほろ苦いというよりも甘じょっぱい経験になった。
「今のチームの雰囲気は2010年のチームに似ている」と語る酒井高徳。サブ組の高いモチベーションがあるから、チームはひとつにまとまっている。目標だったグループリーグ突破は、そんなサブ組が薄氷を踏みながらも叶えた。
もどかしさは残るだろう。悔しさも消えはしない。でも、チームのために仕事ができた。そう思うことで、またチームのために働ける。
ポーランド戦を前に、外国人メディアから日本の強みを訊かれた本田圭佑は、「犠牲心」と答えたという。まさにその犠牲心によって、日本は次のステージに立つことができる。
今、決勝トーナメント1回戦より上、まだ日本代表が見たことのない世界を見ることができるのか? 今度はレギュラー組の覚悟が問われる。