役員のなり手不足や活動負担の大きさについて、メディアでもしばしば取り上げられるPTA問題。PTA活動に積極的に関わりたいと考える保護者は少数派なのではないだろうか。実際には「できれば関わりたくない」「やってられない」という声の方が圧倒的に多い。だが、学校と地域をつなぐ存在としてPTAはいまだに当たり前のように存在し、多くの保護者が「役員決め」という名の地獄を経験している。その現状を取材した。
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役員決めの地獄
東京都内に住む佐藤裕吾さん(仮名)は近年、2年連続でPTA役員を務めた経験を持つ。多くのPTAがそうであるように、最初のきっかけは学年末に配られるPTAの保護者アンケート。参加は強制ではないが、子供が在学する6年間のうちに一度は必ず役員をやることが暗黙のルールとなっていた。
「私は公立の小学校に通う2人の子供がいて、その年は上の子が6年生になるというタイミングでした。ちょうどコロナ禍だったこともあって、学校行事や会議などが自粛や中止になっていた時期です。正直、今やっておけば楽かも、くらいの安易な気持ちでアンケートの『やってもいい』に丸を付けたんですが、ふたを開けてみたら実際は定員割れ。当たり前のように役員が回ってきました」
1年目の役員は10人ほど。佐藤さん以外は全員女性だったことに驚いたという。
「聞けば、これまでは男性が役員になること自体がほとんどなかったそう。周りが女性ばかりなので、『力仕事とかも色々あるので、庶務をやってください』と言われたのでそのまま引き受けました。最初の頃は出しゃばらないように、もう言われるがまま、極力、我を消してやっていたんですけどね」
本来なら1年で“お役御免”となるところだが、翌年はさらに役員希望者が減少。佐藤さんは辞めるに辞められず、しかもまさかの「副会長」に選ばれることになる。そこにはPTA内の人間関係が影を落としていたという。
「2年目は全くやる気はなかったんですが、断り切れませんでした。旧役員の中から『来年も継続してやってもいい』と手を挙げた2人が、どちらもアクの強いベテランママだったんです。2人が絶対に衝突するだろうと危惧した学校側から、『2人の間の緩衝材として入ってほしい』と頼み込まれたんです。まあ、残った結果、緩衝材どころか僕が一番モメる羽目になってしまいましたが」
