非合理の積み重ね→「PTA不要論」に

 他にもPTAには学校外での活動も多い。佐藤さんは参加して初めてこうした活動があることを知ったという。

「学校自体が災害時の避難拠点になっている関係で、その会合が月イチぐらいであるんですが、一向にまとまらない町内会の重鎮たちとのやりとりが、毎回2時間近くは延々と続く。他にも地域の育成委員のような仕事もあって、ここでも昔ながらの非合理なやり方がまかり通っていた。こちらは私が散々声をあげた甲斐もあってか、現在はウチのPTAからは委員自体を出さなくなっているようですけどね……」

写真はイメージ ©optimus/イメージマート

 こうした非合理の積み重ねがPTA不要論につながっていくのは、当然の流れかもしれない。

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なくならない理由と、これからの形

 理不尽と非合理に満ちたPTAに「もうなくていい」と思う保護者は多い。だが、現実にはなかなか制度そのものを変えることは難しい。

「やっぱり共同体の『空気』ですよね。うちは持ち家じゃないんで気楽でしたけど、この地域は戸建てが多くて、PTAで一悶着あってもその後もご近所付き合いが続く。そりゃあ波風立てたくないですよ。理不尽だと思っても、みんな黙って従っちゃうんです」

 それでも佐藤さんは「声をあげる人間がいることも必要」と語る。

「幸い、ウチの学校ではその後、役員が総入れ替えとなり、幾分風通しもよくなりました。僕が辞める際の申し送りで『もう廃止でいいんじゃないか』と伝えた会報も、どうやら現在は出していないようですし、他にも活動のスリム化が進んでいると聞いています」

 PTAは全国的にも解散や退会が増えており、非加入の保護者が一定数を占めるPTAは1割前後にのぼるとする調査結果もある。徐々にではあるが旧来のPTAからの脱却は広がり始めている。たとえば千葉県市川市では、行事ごとに希望者を募る「タスク型ボランティア制」を導入しているという。やれる人ができる範囲で関わる。十分に現実的な方法だろう。

「やり過ごすためだけにやるんだったら、最初から断固拒否でいい。『やる人がいないからお願い』みたいな同調圧力に屈する必要はないでしょう。内心はおかしいと思いながらも黙って参加している人たちも、せめて私のように声をあげる人がいたら、応援の意思表示をしてあげてほしいですね。陰ながらこっそりでもいいので」

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