ちなみに他の役員を決める際も一筋縄ではいかなかったそうだ。これはどこのPTAでも起きている状況だろう。

「最初は当然のように誰もやりたがりません。そこでアンケートで他薦された人や過去に経験のある人、『できればやりたくはないけれど、仕方ない』くらいの返答だった保護者を個別に呼んで、役員たちが総がかりで『そんな大変じゃないわよ』と説得するんです。この説得会議は人員が確保されるまで繰り返されました」

 そもそもPTAは法的には任意加入の団体で、本来、入会や退会は自由だ。入学時に自動的に加入させられるケースも多いが、「断ってもいい」と知らない保護者も少なくない。

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理不尽と非合理の組織

 最初の年は淡々と与えられた役割だけをこなしたという佐藤さん。ただ、実際に活動をしていると理不尽で非合理的なやり方が慣習としてまかり通っている現実に直面したという。

「たとえばPTA会費の徴収はいまだに現金ですからね。集めた現金を手作業で数えてから郵便局まで持っていく。もうネットバンクからの振り込みでよくないですか? お知らせはペーパーレスなのになぜかこういう慣習は残っている。ベルマーク運動もマジで廃止すればいいと思いますよ。PTAで集まって半日がかりで作業するんですが、メーカーや点数ごとに分けたうえで形を切り揃え、封筒に分けて送るまで全部手作業です。それだけやって8000円分程度のポイント。その分会費を上乗せすればいいと思うのですが」

 しかし、廃止や合理化を提案してもベテランの委員たちからは「手作りだから意味がある」「予算は子供たちのために使うもので、私たちが楽するためのものじゃないの」と的外れな意見で議論にならなかったという。そんな活動の中で特に心を折られたのは広報誌作成をめぐるトラブルだった。

「ウチでは会報を年に2回出すことになっていたのですが、印刷はあるベテランママが『ここを使って』と指定してきた業者を使うと決まっていました。しかも会計の方に聞いたら、領収証は業者からではなく、そのベテラマンママ名義で来るという。そんなのどう考えても、怪しいじゃないですか(笑)」

写真はイメージ ©GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート

 しかも次年度には、この広報予算が誰の合意も得ないまま増額に。さすがに看過できなくなったという。

「これは任せられないと思って、問題の解決を図ろうとしたんですが、僕以外に声をあげる人はいなかった。本来なら率先して解決する立場の会長まで、そのベテランママとの衝突を恐れて、『こんなトラブルになるなら、私はもう会議には出ません』などと言い出して、いよいよ心が折れたんです」