老眼鏡をかけ、段差につまずく等身大の姿も…

 人間は年齢を重ねれば重ねるほど、頑固になってしまうものだが、小泉も千明も立場にかかわらず他者の意見を受け入れ、自分の間違いは素直に認める。そんなふうに柔軟だからこそ、年齢や性別に関係なく人からモテるのだ。

 もちろん、そこに至るまで様々な苦労や努力を重ねてきたからこそだが、仕事で成功を収め、自分を慕ってくれる後輩や気の合う友人に囲まれた人生を送る2人に憧れない理由はない。

 それでいて完全無欠ではないところが、彼女たちの魅力だ。一見すると強そうな千明だが、実は繊細。自分が率いるドラマチームの飲み会には後輩に嫌われたくないという思いから参加を避けているし、独身仲間の祥子(渡辺真起子)が同僚から“老害”扱いされていることを知ると、自分ごとのようにショックを受けて、中井演じる和平の胸の中で泣くような一面もある。

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小泉今日子 ©文藝春秋

 また、たまにはお姫様気分を味わいたいといって、年上男性2人を飲みに誘ったことも。千明が多くの人に愛されたのは、弱さを見せないステレオタイプなキャリアウーマンではなく、「寂しい」「辛い」「甘えたい」といった人間らしい感情も隠さないキャラクターだったからではないだろうか。

『飯島直子の今夜一杯いっちゃう?』で飯島が、コロナに感染した千明(小泉)が和平(中井)に泣いてすがるシーンを挙げ、「今日子さんぽいと思った」と語る場面があった。

 中井もまた「弱くて素敵な部分。それがあるから小泉今日子という人はあんなにも輝いている」と分析しており、そこも小泉と千明の共通する部分だ。小泉自身も末っ子で、本当は甘えたいタイプだと自覚しているのだとか。

 しかし、同時に“お姉ちゃん”への憧れがあるという小泉。だからこそ、自分が先頭に立ち、後ろを歩く人たちのために道を示したいと語っていた。

 番組では、小泉が千明と同じように段差も何もないところで転びかけ、飯島に心配される一幕も。店内ではメニューの文字が見づらそうに目を細め、老眼鏡をかける。大人だからって完璧なわけじゃない。立派に振る舞うのではなく、むしろその時々の悩みや弱さもさらけ出すことで大人としての責任を果たそうとする。しかも、良い意味で隙があってチャーミングなところが、若者からも支持される所以なのだろう。
 

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