自分は自分を理解しているのか? 沸き上がる不安や怒りは本当に「それが」原因なのか。 父親殺しの女子大生と臨床心理士を描く『ファーストラヴ』の島本理生さんと精神科医の星野概念さんが、現代人の心の問題を語り合った。

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事件に対峙するリアルすぎる臨床心理士

島本 星野さんと初めてお会いしたのは、とあるトークイベントの打ち上げの席でした。それがご縁で、『ファーストラヴ』の中で臨床心理士の描写について監修もしていただきました。

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星野 酒席もちょくちょくご一緒させていただいて。というか、島本さんと素面で話すのは初めてじゃないですか?

星野概念さん ©末永裕樹/文藝春秋

島本 いつもは2人ともすごく酔っ払ってますからね(笑)。

星野 『ファーストラヴ』を改めて読みましたけど、すごくリアルでした。カウンセリングする立場でも実は葛藤を抱えていたりするよな、とかうなずいてしまう感じで、臨床心理士の真壁由紀は実際にいる先生なんじゃないかって思うくらい実在感がありましたよ。

島本 そう言っていただけるとホッとします。

星野 臨床心理士の目を通して、父親を殺した女子大生の聖山環菜の過去が紐解かれていく、というストーリーです。このような物語を書こうと思ったのはなぜでしょうか。