支配欲を隠して相手の気を引くテクニックとは
島本 そのエピソードをカウンセラーの方に話してみたら、「その男性にはたぶん強い支配欲がある。あなたが正解を言ってしまったらコントロールできなくなるから、何を言っても間違っていることにされてしまう」と指摘されて、どきっとしました。
LINEなんかでも、わざと話を途中で切ってしまうと、相手の気を引けるっていうテクニックがあるとか。読み終えた物語より、完結していない物語のほうが人の心に残りやすいらしいです。
星野 でも興味を持っていない男の人に揺さぶりをかけられても、女性的には「いやいや、あなたのこと知らないし」ってなっちゃう。
島本 それはそうですね(笑)。しかも意識的にやっていることがバレた瞬間に信頼関係が壊れますし。
星野 まあ、そうですよね。
島本 でもそういう危い方法で女性を手玉に取っている男の人は少なくないと思うんです。
星野 女性の敵みたいな男は結構多いのかも。これは僕個人の印象ですけど、女性を振り回す男の人ってその成功体験が癖になって人を振り回す依存症みたいになっちゃう。女の人の方でもそういう男性に振り回されて辛い思いや悲しい思いをするわけじゃないですか。「この男は危険だ」って勘が働くと思うんですが、あれには抗えないものなんですか?
何かをしてあげたほうが危険な関係に?
島本 個人的には、DVを受けるほど離れられなくなる心理に近いのかな、と思います。あとは、人間って何かをしてもらったことではなくて、何かをしてあげるほどに相手のことを好きになると聞いたことがあって、それは私も実感としてあります。自分が何かをしてあげた分だけ、無意識に見返りを求めて、それが返ってくるまでは別れられない。そんな深層心理も働いているのかなと。
星野 そういう感情を理性的にコントロールするのは難しいのかな。でも、あげた分が返ってこないからもうこの男に期待するのはやめよう、みたいな発想にはならないわけですか?
島本 そう思える人はいいですが、もともとの性格として、なんでも自分が悪い、と考えがちな人っていますよね。自分が相手のことを好きすぎるから、自分が重いから、それなら自分が我慢すれば、もしかしたら相手が応えてくれるかもしれない、という心理状態に入るとなかなか抜けられないのかも。
星野 ああ、なるほど。そういう人と話してみたいです。でも、僕の立場だと通院する患者さんとは話せますけど、通院はしなくていいけど男性に振り回されちゃうような人って、あまり会うことがないんですよ。
島本 精神科医が本職の星野さんが聞いてくださるなら、自分のことを話してみたい女性はいっぱいいるんじゃないですか?
星野 そう思われることが多いんですが、たぶん僕が話を聞いてもうまくいかないんじゃないかなあ。同じ人の話を聞くのでも、診察をするのと相談を受けるのでは、話し手も聞き手もまったく意識が違うんです。
後編に続く
http://bunshun.jp/articles/-/8032
※6月16日大盛堂書店にて