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島本理生×星野概念#1「心の調子が悪いときには気軽にカウンセリングを」

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親子の間でこんなことが起こるのか

島本 中学生のときに精神科医の斎藤学先生の本に出会ったのがきっかけです。家族問題や性虐待の問題を扱った本を読み、親子の間でこんなことが起こるのかと衝撃を受けました。心理学をモチーフにした作品をいつか書きたいと思っていましたが、今回やっと実現しました。

星野 実際に臨床心理士の方の取材もしましたか?

島本 はい、いろいろな方にお話を聞きました。実際の診療現場も知りたくて、自分でも催眠療法を受けてみたりもしました。

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星野 ご自身でも体験してみたんですか。

島本 はい。計3人のカウンセラーのところに行ったんですが、最初の先生が全然合わなくて。アメリカ帰りでちょっとスピリチュアル的なことを話す方で、会った途端に前世の話をしだして。

星野 それは大変な人に会っちゃいましたね(笑)。

島本 でも、帰るわけにもいかずカウチに寝っころがるわけです。それで「自分が一番落ち着く場所を想像してください」と。私は結構暗くて狭いところが好きなので、ひっそりとしたホテルの一室を想像していたら、「そこは本当に広々として開放的な空間ですね」って言われて、これはダメだと思いました(笑)。

星野 まったく話が噛み合ってないじゃないですか。

島本 はい(笑)。その苦行が診療時間いっぱいの50分間続いて、しかもそれで1万2000円っていう。民間のカウンセリングって保険が効かないのもあって、どうしても高くなるんですよね。

星野 気軽に行ける値段ではないですね。

島本理生さん ©末永裕樹/文藝春秋

カウンセリングに気軽に行ける世の中になれば

島本 ただ、3人目の方とはすごく相性が良くて、「あの出来事にこういう意味があったのか。だから私は悲しかったのか」と、自分でも気づいていなかった過去の出来事の意味が明らかになりました。最初のスピリチュアルの人だったら100回会ってもピンと来たかどうか……。

星野 スピリチュアルの感覚も大事だと思いますが、最初からそれだとビックリするかも。

島本 『ファーストラヴ』でも描いたことですが、たとえば親への怒りや悲しみを無理やり押し込めている人って、その憎悪が恋人とか友達とか、あるいは仕事相手などの第三者に飛び火してしまうことがあるじゃないですか。

星野 何か特定の言葉を言われるとキレて止まらなくなっちゃう、しかもその原因がわからない、というケースがあったりします。

島本 結果、周囲からは「あの人怖い」と距離を置かれたり、なにより本人が生きづらくなってしまう。そんな自分の心の状態を把握して整理していくことで、誤解や辛さも減るかなと。そのために、カウンセリングに気軽に行ける世の中になればいいなと思っているんです。そういえば、星野さんはいとうせいこうさんの精神科の主治医でもあるんですよね。お2人の対談が『ラブという薬』にまとめられています。すごく読みやすくて、より良いコミュニケーションの手がかりになるお話がたくさんあって、自分も心の調子が悪いときに受診してみようかな、と思えました。

星野 ありがとうございます。あれは、いとうさんが診療でお話する中で気づきを得られたようで、いとうさんの突然な提案で実現した企画です。対談では精神科診療のことや、精神科と関係ないことなど色々な話をしました。