世間から忘れられゆく時代のなかに、かつての憧れを見る者たちがいる。昭和の車を愛してやまない、酔狂なオーナーたちの素顔とは?

 今回は、セリカXXに乗る「じゅんいち」さんをご紹介。

かつて父が乗っていたセリカXXを手に入れた「じゅんいち」さん

父の背中を追いかけて

 小さい頃からスポーツカーが好きで、これの前は180SXや32スカイラインに乗っていたんです。このセリカはそれより前の世代の車ですけど、子どもの頃に父が乗っていた型で、ずっと憧れがあったんですよね。

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1984年式の2代目セリカXX。初代から路線を変え、空力性能の高いフォルムでスポーティな印象に

 田舎育ちなので車でのお出かけが多く、家族の思い出のなかにはいつもセリカがありました。運転する父の姿を見て、「大人になったらこうなろう」というイメージがあったのかもしれません。

 それで、90年代のスポーツカーには色々と乗りましたし、30代を迎えてそろそろ落ち着こうと、7、8年前に買ったのがこの車です。それまでの車に比べると馬力も低めですけど、やっぱり乗ると当時の記憶が蘇ってくるようで、これは何にも代えられない感覚ですね。

エッジの効いたボディラインから隆起するフェンダーが印象的

 ただ悲しいことに、父の反応は想像以上にドライだったんですよ。もう父は趣味を引退しているものの、昔のセリカの写真は大事に取ってありますし、少しは喜ぶだろうと思っていたのですが……。

 実際には「こんな乗りにくい車にはもう乗れない」といって、まったく興味を示さなくて。おまけに「もういい大人なんだから、いい加減落ち着いた車に乗りなさい」とまでいわれてしまったんですよね。

 さすがに少しガッカリしましたけど……。まぁ、それでセリカに乗る楽しさがなくなるわけじゃないですから。

 それに、父は乗りにくいといいますが、実際には案外使いやすいんです。スポーツ系の車としては乗り心地も悪くないですし、消耗品はまだ普通に手に入りますし、トラブルも比較的少ないですしね。

上級モデルに設定されていたデジタルメーター。近未来感に心が躍る

 ただ、やっぱり助手席に乗ると結構しんどいみたいですね。以前付き合っていた人からは、「この車で遠出は疲れるから勘弁して」って。信号待ちで見られるのもイヤだったみたいで、遠出のたびにレンタカーを借りたりして、それでちょいちょい揉めることもありました。

 そんな感じで、あまり身内からの評価はよくないですけど……。でもそのぶん、同じ趣味の人たちとの交流は深められるんですよね。今はトラックドライバーをしているのですが、上司にも旧車が好きな人がいて、今日のイベントでも一緒に展示していて。

約40年前の車だが、マイナートラブルのほかは快調そのもの

 ほかにも以前の仲間がAE86を買って車弄りを再開したり、色んなところで旧車が関係を広げてくれるので、まだまだ車の趣味は続けていきたいですね。

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