世間から忘れられゆく時代のなかに、かつての憧れを見る者たちがいる。昭和の車を愛してやまない、酔狂なオーナーたちの素顔とは?

 今回は、S130型フェアレディZに乗る「ムネ」さんをご紹介。

普段は建築業を営むムネさん。イベントの日はリーゼントで気合いを入れる

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あの輝かしい日々をもう一度

 若い頃からずっと、この年代の日産車が好きで乗り継いできたんですよ。親父がセドリックやグロリアに乗っていたこともあって、小さい頃からそういうプラモデルを作るのが好きでしたね。

 免許を取って最初に乗ったのは330のセドリックで、その後はシーマなんかにも乗りつつ、22歳の頃にこの型のZを買って。それから結婚するまでの5年ほど、Zを弄って乗り回していた時期が本当に楽しかったんですよね。

伸びやかなフロントノーズが美しいS130型フェアレディZ

 結婚を機に普通のファミリーカーに乗り替えましたが、当時は自分としても「もう十分楽しんだ」と思っていたんですよ。仲間うちでもそういう車に乗っているのは私が最後でしたし、辞め時としてはちょうどいいかなって。

ルーフから流れるようにリアエンドへとつながっていく優雅なファストバックスタイル

 それからは子どもも2人生まれ、キューブにセレナ、エルグランドと乗り継いできたんですけどね。でも、10年以上車の趣味から離れているうちに、「また弄りたい」という欲が抑えきれなくなっていって……。上の子が小学5年生の頃、610ブルーバードを買い増すことにしたんです。

昭和のスポーツモデルらしい簡素かつ機能的な運転席。ダッシュボード中央の3連メーターはZの伝統

 妻は「どうせ乗るとは思っていたけど、もっと後だと思っていた」と呆れ顔でしたね。申し訳ないとは思いつつ、こういう車は乗れるときに乗っておかないと、手に入らなくなってしまうと思って。

 このZを買ったのは4、5年前で、ちょうど旧車の値段が高騰しはじめた頃でした。当時でもだいぶ高くなっていて驚きましたけど、「人生のなかでもう一度Zに乗っておきたい」という気持ちには抗えませんでしたね。

ミラーはフェンダー装着タイプではなく、エアロ形状のドアミラーを選択

 やっぱり、妻からはあまりいい顔はされませんけど……。ドライブに誘っても、「見られるのが恥ずかしいから乗りたくない」なんていわれちゃって。あとは、月に数回しか乗らないZの税金や維持費で、家の車より高くついてしまうのも納得いかないみたいですね。

免許を取ってから日産一筋。旧車だけでなく、ファミリーカーも日産を乗り継いだ

 子どもも車にはまったく興味を示しませんし、以前の仲間もみんな普通の車に乗っていますが……。それでも自分は、最近の車ではどうにもワクワクできないんです。とくにこのL型エンジンのフィーリングや整備性には、長く乗るほど抜け出せなくなる魔力がありますからね。

次の記事に続く 「貯金はほとんどできていませんが…」7台の車を維持するために100坪超のガレージハウスを購入! 2歳児と0歳児を育てる“夫婦のクルマ愛”が異常すぎた

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