世間から忘れられゆく時代のなかに、かつての憧れを見る者たちがいる。昭和の車を愛してやまない、酔狂なオーナーたちの素顔とは?

 今回は、サニートラックをカスタムする田中さんをご紹介。

孫と二人で旧車イベントに参加する田中さん

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可愛い孫と、今日もサニトラで

 今は楽しいことが他にいくらでもあるけどさ、俺なんかの頃は、車くらいしかなかったからね。16歳でバイク、18歳で車の免許を取って、とりあえず車買わなきゃって。そんな時代でさ。

「サニトラ」の相性で長年親しまれているサニートラック

 最初の車はマークIIのGSSだったね。2000ccのツインカムで、純正のソレックスのやつがあったの(注:1972年に登場した2代目マークIIの上級グレード。当時ツインカム機構は高性能エンジンの象徴だった。ソレックスは現在でもファンの多いフランスのキャブレターメーカー)。それからはアメ車が多かったかな。コルベットにも乗ったし、セダン系もいくつか乗って、結婚してからもしばらく遊んでたね。

貨物車としての機能美を感じさせるリアビュー

 娘が生まれてからはワゴン車に乗り替えたから、趣味はバイクの方にいって、今もハーレーに乗ってるよ。このサニトラも、バイク運ぶのにちょうどいいかなって、15年前くらいに買ったんだよね。もう最後の車にするつもりだったから、若い頃に乗っていたキャブ車にしようってのもあったかな。

 昔はカミさんとも、しょっちゅうこういうイベントに来てたんだけどね。今はもう全然。誘っても「せっかく休みなのになんでわざわざ」っていわれちゃうよ。まぁ若い頃は、俺が車やバイクで連れ回してたから、仕方なく一緒に来てただけなんだろうね。

フラットな面構成のシンプルなインパネ。無骨な雰囲気が魅力的

 でも、今日は孫と二人で来てるんだよ。同居じゃないんだけど、娘家族が週末になるとよく来るから、もう随分前から預かるようになってさ。俺がこういう集まりに行こうとすると、カミさんが「一緒に連れて行きなよ」って。

 おかげで、バイクでどっか行きたくてもなかなか行けないんだけどさ。なんだかんだでくっついてくるし、可愛くて連れ回しちゃうね。

片側2本出しのマフラー。テールエンドの長さが特徴的だ

 ただ、オムツの頃はまだ大丈夫だったけど、取れたばっかの頃は大変だったね。高速に乗るたびヒヤヒヤだよ。自分の娘の子育ては全部カミさんに任せて、俺は遊んじゃってたから。この子の方がむしろ面倒見てるよね。カミさんには「そんなことしなかったのにねぇ」なんていわれてさ。

お孫さんもサニトラの助手席がお気に入り

 孫はもう車やバイクが好きみたいだから、「大きくなったら全部あげるよ」とは伝えてるよ。まぁまだ、車が好きなのか、出かけるのが好きなのか、よくわからないけど。孫はこの子だけだからね、売るなり乗るなり、好きにしてくれたらいいよ。

次の記事に続く 「もういい大人なんだから」「いい加減落ち着いた車に乗りなさい」幼少期に憧れた父の愛車“セリカXX”を購入するも…車を見た父がまったくの無反応だった“意外なワケ”

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