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ヒーローなんかじゃない『ハン・ソロ』 小物アウトローの「末路」を考える

サブカルスナイパー・小石輝の「サバイバルのための教養」

2018/07/07

genre : エンタメ, 映画

小物アウトローが受け入れている「みじめな最期」

「えらくハードな展開ですね。不二子も次元も、そんなに簡単に死なせちゃっていいんですか?」

小石「犯罪組織の大ボスならともかく、自らの知恵と力だけを頼りに生きてきたルパンたちのような小物アウトローの末路は、そんなもんやろ。『カリオストロの城』の最後で、ルパンがクラリスを連れて行かなかったのも、『最期は結局、野垂れ死に』という末路を、誰よりもルパン自身が覚悟していたからやと思うで」

「なるほど。そう考えると『カリオストロの城』のダークサイドが浮かび上がってきますねえ」

小石「そうそう。ルパン一味の明るさは、本当は『自らのみじめな最期』を100%受け入れていることから来る、反作用みたいなもんなんや。話を戻すと、ベケット=ルパンは仲間二人を失ったものの、新入りのハンの中に、若い頃の自分の姿を見いだす。生意気で口八丁手八丁だが、頭のキレも身体能力も抜群。何よりも、おそろしくハングリーで、自信過剰で、自分の未来を120%信じ切っている。しかも、キーラという一癖も二癖もありそうな危ない女に惚れ込んでいる」

「そう言われてみると、この映画のハンのキャラクターって、最初の頃のルパンそのものですねえ。キーラも、峰不二子とうり二つだし」

小石「そうやろ。『カスダン親子は脚本を書く際に、ルパン三世を参考にしたのかも』と、つい思ってしまうぐらいや。ベケット=ルパンは、レアメタルの横流しを約束していた犯罪シンジケートから、失敗の落とし前をつけるよう迫られる。そこで彼はハンとチューイ、そしてキーラを新たな仲間として、最後の大バクチに打って出るんや。

 ここから先の展開は劇場で確認して欲しいんやけど、ベケット=ルパンの本当の意図が、ハンとチューイを踏み台にして、自らの生き残りを果たそうとすることにあったのか。それとも、ハンに命がけで自らの『アウトロー魂』を伝授しようとしたのか。それは分からん。おそらく、自分自身にもよう分かってなかったんやないか。ただ、この作品における老盗賊ベケットの死を、『ルパンもこういう風にして死んでいったんやな』と受け止めることは、なかなか味わい深い映画の観方やと思うで。そんでな、ハンは最後にベケット=ルパンの亡骸を前にこうつぶやくんや。『じいさん、これからは俺がルパンの名を継ぐぜ』。これだけは、映画にはない俺オリジナルの妄想シーンや」

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「ルパンの世代交代の話にしちゃうんですか!? 『スター・ウォーズ』のファンとルパンのファン、双方から石を投げられそうな話ですねえ。炎上しても知りませんよ」

小石「まあええやん。俺は『こういう楽しみ方もありまっせ』と提案しているだけなんやから。ただ、この映画のリアルでハードなテイストは、『スター・ウォーズ』世界以上に、ファーストシリーズやカリオストロの『緑ジャケット版ルパン』に合っていると思うんや。俺自身を含め、緑ジャケットのルパンをリアルタイムで経験してきた世代も、もう50~60歳代。『自らの衰えに向き合わざるを得なくなったルパン』が、心にしみるんやないかなあ」

INFORMATION

『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』
6月29日(金)公開
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン