『スター・ウォーズ』の原点である『エピソード4・新たなる希望』(1977年)から登場し、大活躍する宇宙の密輸屋ハン・ソロ。その若き日々を描いた新作映画『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』が公開中。『スター・ウォーズ』の初心者でも楽しめる快作だが、さらに深く楽しむためのポイントを紹介する(後半部分はネタバレを含みます)。

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『ハン・ソロ』のファルコンは、ツルンとしていてメカっぽさが全然足りない

恋ちゃん(大手マスコミの、元気な映画好き若手社員)「小石さん、『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』はどうでした? ハン・ソロと『ミレニアム・ファルコン』に惚れ込んでいる小石さんには、語りたいことが山ほどあるんじゃないですか?」

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小石輝(恋ちゃんの先輩社員だが、よくいじられているオタクおじさん)「いやあ、予告編でこの映画に登場する『初期型ミレニアム・ファルコン』を見た時には、ものすごく心配したけどね」

「どうしてですか?」

小石「ファルコン最大の魅力は、機体各部の外板がはずされて、複雑な内部メカが露出しているところや。不良のカーマニアが、むちゃな違法改造を繰り返したあげく、ほとんど原型をとどめなくなったオンボロのスポーツカー、というイメージやね。ところが、今回の映画のファルコンは、ツルンとしていてメカっぽさが全然足りない。『作り手たちはファルコンの魅力の本質を分かっとらんのか!』と怒ってたんやけど、実際に映画を観たら『ああ、こういうことがやりたかったんか』と納得。己の不明を恥じたわ。

 映画自体もようできとった。最近のスター・ウォーズ映画の中では、登場人物が段違いに生き生きとしていたし、物語の展開も二転三転。詐欺師が主人公の傑作映画『スティング』(1973年)を思わせるどんでん返しも用意されていて、すごく楽しめるでえ。成功の一因は、シリーズの中でも評価が高い『エピソード5・帝国の逆襲』の脚本を手がけたローレンス・カスダンが、息子のジョナサン・カスダンと共に、今作でも脚本を担当しているからやろうな」

ミレニアム・ファルコン ©getty

「確かに『帝国の逆襲』は、各キャラクターそれぞれの、お互いに対する繊細な思いが伝わってきて、シリーズの中でも特に味わい深いですよね」

小石「それは、個々の登場人物の『動機づけ』が、しっかりとできているからや。主人公のルーク、ヒロインのレイア、そしてハン。それぞれがお互いを大切にしつつも、異なる人生の背景を持っていて己の道を行こうとするがゆえに、さまざまな矛盾が生じてくる。その過程や、登場人物たちの抱える葛藤が、観客にもよう伝わってくるんや。

 今回の『ハン・ソロ』でも、若き日のハンや相棒のチューバッカだけじゃなくて、ハンの元恋人キーラ、ハンのロールモデルとなるベテランの盗賊ベケットや、その恋人ヴァル、仲間のリオ、それぞれに背負ってきた過去があり、絆があり、求める未来がある。その絡み合いが物語を進めていくから、大人でも楽しめる深みのある作品になっていると思うで」

「だけど、興行的には『スター・ウォーズ』シリーズ初の大ゴケ作品として、さんざんに言われてますね」

小石「作品の出来と客の入りは関係ない、というのが映画を観る際の鉄則やからね。俺の周囲にいる『スター・ウォーズの達人』たちはみんな、『予想よりもずっとおもしろかった』『楽しめた』と好意的な評価をしているよ。

 ほんまにスター・ウォーズが好きな連中は、派手な戦闘シーンや、メカやクリーチャーのデザイン以上に、『登場するキャラクターたち(人間、エイリアン、ロボット)が、血の通った存在として魅力的に描かれているか』を重視するもんなんや。初期三部作が今でも人気なのは、やっぱりそこが秀でているからやろう。『スター・ウォーズ』を愛する人は、世評に惑わされず、ぜひ劇場でご覧になることをお勧めするわ」

「マニア向けっていうことは、『スター・ウォーズ』の初心者、一見さんはお断りなんですか?」

小石「いやいや。この作品のすごい所の一つは、『スター・ウォーズ』に関する予備知識がまったくない人が観ても、『宇宙を舞台にしたアウトロー映画』として十分に楽しめることや。『スター・ウォーズ初心者は、まずはこの映画を観てから、成長したハンが活躍する『新たなる希望』に入っていく、というやり方も十分ありやと思うで」