『ゲゲゲの謎』と『犬神家の一族』の共通点
『ゲ謎』のストーリーの大枠は、横溝正史の『犬神家の一族』と同じ。名探偵・金田一耕助が活躍するこの作品は、監督・市川崑、主演・石坂浩二による1976年公開の映画を筆頭に、古谷一行バージョン、片岡鶴太郎バージョン、稲垣吾郎バージョン、池松壮亮バージョンが作られるほど、映画・テレビで繰り返しリメイクされてきた。
信州財界の巨人・犬神佐兵衛翁が莫大な遺産を残して死去。その遺言を巡って、凄惨な連続殺人が発生する。金田一耕助は、複雑に絡み合う血縁、因習、そして愛憎が渦巻く旧家の闇へと分け入り、おぞましい真実に迫っていく。ある種のパロディと言って差し支えないほど、基本構造が酷似しているのだ。
具体的に例を挙げるなら、(1)閉鎖的な共同体での連続殺人事件、(2)醜い遺産争い、(3)血の因習、(4)異形なるもの(『犬神家の一族』であれば湖に逆さまに突き刺さった足や、ゴムマスクを被った佐清)、(5)招かれざる探偵、などなど。どちらも、「閉鎖的な空間に外部からやってきた人物が、事件の謎を追うなかで、一族の秘密や闇に触れていく」という構図だ。
もはやこれは、ミステリーホラーの鉄板テンプレートともいえる。『犬神家の一族』の因子は、『金田一少年の事件簿』、『TRICK』、『零』シリーズ、『ひぐらしのなく頃に』といった漫画・アニメ・ドラマ・ゲームに受け継がれ、我々もその世界観を(『犬神家』を観ている・観ていないに関わらず)知らず知らずのうちにプリセットしている。
『ゲゲゲの鬼太郎』には関心がなくても、『犬神家』の匂いに惹かれて劇場に足を運んだ観客も多かったはずだ。
