ファンを逃さない巧みなSNS戦略
『ゲ謎』は、原作漫画や過去のシリーズへのオマージュのほかにも、社会問題や民俗学など、多岐にわたる要素が複雑に織り込まれている。
『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』の放送中、毎週ファンによる考察が溢れていたように、『ゲ謎』も負けず劣らずSNSを賑わせた。
この熱気を、公式サイドは見逃さない。設定画や初期キャラクターデザイン、制作中のエピソードを公開したり、興行収入の節目や季節の挨拶に合わせて、描き下ろしイラストを順次アップしたり、積極的にファンとコミュニケーションを行った。
特定のハッシュタグを付けて感想を投稿するキャンペーンも、定期的に開催された。SNS上での拡散をさらに促進したのである。
リピーター施策も抜かりない。一定の周期で入場者特典を用意し、その内容をSNSで告知することで、ファンが繰り返し劇場に足を運ぶ動機を創出。監督や脚本家が登壇するトークショーも実施された。
327カットのリテイクを施した『真生版』の公開は、その最たるものだろう。『ゲ謎』成功の要因には、SNSの巧みな活用があったのである。
前述したように、結果的にこの作品は幅広いターゲットにリーチした。(1)『犬神家の一族』に代表されるミステリーファン、(2)ゲゲ郎と水木の関係性に“萌える”ファン、(3)幼少期に『ゲゲゲの鬼太郎』に親しんだ古参のファン、(4)SNSでの盛り上がりを見て駆けつけたライト層。もちろんコアなアニメファン、映画ファンもいたことだろう。
『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』は、かつてのファンを呼び戻しつつ、大人向けミステリーホラーに舵を切ることで、新しい観客層を獲得。作品そのものの出来はもちろん、キャラクターの魅力、プロモーション戦略によって大ヒットを記録した。
本作は、今後制作されるアニメーション映画の、偉大なメルクマール(指標)となることだろう。
参照
※1 https://www.snr.co.jp/archives/10623/
※2 https://febri.jp/topics/kitaro-tanjo2/
