ゲゲ郎と水木の「年の差バディ」
古賀豪監督は、ゲゲ郎と水木のふたりの関係性を「年の差バディ」と呼んでいる(※2)。従来の『ゲゲゲの鬼太郎』シリーズではあまり見られることのなかった強固な友情が、作品の核を成していることは間違いない。
2人は極めて対照的な存在だ。 ゲゲ郎は滅びゆく幽霊族の末裔であり、行方不明の妻を捜すという個人的な使命を背負っている。一方、水木は帝国血液銀行に勤めるサラリーマンであり、立身出世のため龍賀一族の秘密を探るという野心を抱いている。
彼らは閉鎖的な哭倉村で出会い、村に巣食う恐ろしい因習と連続殺人の闇に巻き込まれるなかで、それぞれの目的が交錯し始める。当初はお互いを疑うようなぎこちない関係だったものが、圧倒的な恐怖に直面することで、生き残るために協力しあう。彼らの関係性は、対立から始まり、最終的には深い信頼と友情、そしてある種の運命共同体へと昇華するのだ。
ミステリの世界において、2人の男性がコンビとなる例は非常に多い。金田一耕助と等々力警部(横溝正史作品)、明智小五郎と小林少年(江戸川乱歩作品)、シャーロック・ホームズとジョン・H・ワトソン(コナン・ドイル作品)、エルキュール・ポアロとアーサー・ヘイスティングズ大尉(アガサ・クリスティ作品)、杉下右京と亀山薫(『相棒』シリーズ)……。
彼らは、その関係性の深さや、キャラクター同士の相互作用の魅力から、二次創作におけるブロマンスの格好の題材となる。バディもの→さらに踏み込んでBLものとして解釈するファンが一定数いたことも、女性から大きな支持を得た理由のひとつだろう。ファンアートを中心にしたSNSでの推し活が、リピーターの増加に繋がったのだ。
