三度目の『横道世之介』

――現在、毎日新聞で「永遠と横道世之介」を連載中ですね。

吉田 1作目の『横道世之介』では世之介は十八から十九歳、次の『続 横道世之介』は二十四から二十五歳。今回は三十八歳から三十九歳までの話になりました。続篇を書き終えてから編集者と話すうちに、なんとなく三十代の世之介の姿が見えてきて、書きたくなったんです。

――『横道世之介』はバブル期の話ですよね。当時の流行などが細部までよく伝わってきましたが、あれはご自身がつけていた日記を参考にされたそうですね。

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吉田 日記というと大げさですけれど、今もメモはつけています。今日なら「文春で取材を受けた」くらいのものですが。今回の連載も当時のメモを読み返しながら書いていますが、2007年から2009年にかけての話なので、そんなに今と大きく違うとは感じないですね。

 その前の『続 横道世之介』は、1993年から1994年にかけての話でしたから、ずい分違いましたね。今は安い洋服なんて当たり前でしょう? スーツだって2万円くらいで一式揃う。でも当時は洋服が高いんですよ。メモを見ると、セーターを分割で買っていたりする。

――世之介の話は三部作で完結ですか。

吉田 ひとまずはそうですね。本当は、世之介の一生、0歳から亡くなるまでを1年ごとに書きたいくらいなんですが。さすがにそれはできなくても、スピンオフ的に「少年横道世之介」はやりたいなと思っています。

――以前、執筆中の作品の登場人物に影響を受けるとおっしゃっていましたよね。『太陽は動かない』みたいなスパイものを書いている時はきびきび動いていたけれど、世之介を書いている時はだらだらしてしまう、って。じゃあ今は……。

吉田 だらだらしています(笑)。

 

撮影:深野未季


よしだ・しゅういち 1968年長崎市出身。97年に『最後の息子』で第84回文學界新人賞を受賞し、デビュー。2002年、『パレード』で第15回山本周五郎賞、『パーク・ライフ』で第127回芥川賞を受賞。07年『悪人』で第61回毎日出版文化賞、第34回大佛次郎賞を受賞。10年『横道世之介』で第23回柴田錬三郎賞を受賞。19年『国宝』で第69回芸術選奨文部科学大臣賞、第14回中央公論文芸賞を受賞。同作は25年に映画化され、大ベストセラーに。22年『ミス・サンシャイン』で第29回島清恋愛文学賞を受賞。16年より芥川賞選考委員を務める。著書に、『路』『怒り』『太陽は動かない』『橋を渡る』『犯罪小説集』『湖の女たち』『オリンピックにふれる』『永遠と横道世之介』『罪名、一万年を愛す』など多数。

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吉田 修一

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