アバンギャルドな演出にも挑戦
回想シーンでは色調を変えたり、留置所で襲われるシーンでは相手の男の顔をCGで強烈に歪ませるなどのアバンギャルドな演出も印象に残る。
「でも、私の視点からはああいう風に見えるんです。私も、嫌なことがあった時、人がああいう歪んだ風に見えたことがありましたから。福田さんは留置所での事件の時、相手の男の顔が爬虫類に見えたと書いています。でもさすがに人間を爬虫類にはできない(笑)。CGの方に目を大きくしたり小さくしたり、皮膚が地獄の底みたいにボコボコになるようにしてくださいとお願いしたら、そのまま作ってくださって」
最後に、長編初監督の感想と今後の展開を聞いてみた。
「振り返れば面白い経験でしたけど、撮影中、現場では、お弁当の味がわからなくなりました。撮影の日数が少なくて、時間があまりなかったこともあり、ストレスで壁を蹴ったりしていました(笑)。でも監督業としては、もう1作やりたい題材があるので、なんとかこの映画が成功するように、そして2作目が撮れるよう頑張ります」
いしだ・えり 熊本県出身。『遠雷』(81年)で日本アカデミー賞優秀主演賞と優秀新人賞を受け、『嵐が丘』(88年)、『サッド ヴァケイション』(07年)、さらにはハリウッド作品『G.I.ジョー:漆黒のスネークアイズ』(21年)など多数の作品に出演。一方、2019年に短編映画 『CONTROL』で初監督を務めた。
『私の見た世界』
1982(昭和57)年、殺人事件の犯人として指名手配された佐藤節子(石田えり)。妻であり母親でもあった彼女は、顔や名前を変え、逃走を続けた。時効はまもなく……。そんな彼女の目から見た世界がスクリーンいっぱいに広がる、異色の「主観映画」。女優として知られる石田えりが初めて長編映画を監督。脚本、編集そして主演も担当している。
監督・脚本・編集:石田えり/出演:佐野史郎、大島蓉子/2025年/日本/69分/PG-12/配給:トライアングルCプロジェクト/7月26日よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開 ©2025 Triangle C Project,Inc.
