人を喜ばせるのがプロの仕事
安田 平安神宮のブライダルビデオの山本さんという方に弟子入りした時、僕が撮った画と編集したものを見て、「安田君の画はかっこいいし、きれいや。せやけど、プロの仕事はお客さんが喜ぶ画を撮ることなんやで」と教えてくれたんです。
山本さんの編集した映像だと、平安神宮の渡り廊下を延々と親戚全員が渡るまで2分ぐらい回している画を使うわけですよね。そんなの5秒あったら意味分かるやん、と僕は思っていたんですけど、「親戚は『あのおっちゃん、元気そうやな』『あのおばちゃん、年取ったな』って喜んで見はるから、ここは自分の感覚で編集するんじゃなくて、お客さんが喜ぶから長く使うんや」と。その時に、「プロはお客さんを喜ばせなきゃならない」ということが、自分のその後のものづくりにすごく深く根付いたと思います。
——そこが出発点だったんですね。大学在学中にそういうお仕事を始めて、そのまま先に進んだという感じですか?
安田 そういうことですね。もちろん何かを作りたいという思いはありましたけれども、まだ映画で何かを撮るとかいう感じじゃなくて。ただ、例えば映像やったら映画を頂点にして、街のビデオ屋さんが下とか、ヒエラルキーとかを作りがちですけれども、そうではなくて。映画みたいにたくさんの人が見てくれるのではなく、新郎新婦とそのご親族ぐらいしか見てくれへんかもしれん。でも、そのぐらいの人たちがテープを擦り切れるほど一生懸命見てくれる。これはどっちが上、下と言う話じゃない。仕事としてもやりがいがありましたし。
その後イベントの演出からセットデザインとか収録まで、神戸ワールド記念ホールという6000人ぐらいのホールをメインにして、予算の中でどうやったらいいものを安くできるかとずっと考えてきた。何か表現したいとか、お客さんを喜ばせたいというのは、映画という形は取らなくても、ずっと仕事の中であったという感じがします。
——イベントでプロデューサー業的なことをやるわけですね。
安田 そうです。演出もプロデュースもセットデザインも。普通こういった仕事は全部専門職に依頼するけれど、僕は1人でほとんどのことができるので、5人分やったら請求は2人半分ぐらいにして、お客さんにとってはすごく安いし、僕にとってはそこそこの商売になる。お客さんを喜ばせる、ユーザーニーズをとらえるというのが、自分の中ではすごくうまくいっていて。
イベントでも、カメラマンだけで行く場合と、演出も一切合切収録まで任される場合の2パターンあって、イベントを収録したDVDを売るんですが、カメラマンだけで行ってお客さん自身が演出したイベントよりも、自分が演出したイベントのDVDの方が、何倍も多く売れるんです。
例えばスピーチ、表彰のセレモニーのやり方、映像、音楽、セットデザインというのを複合的に僕が演出したものは、お客さんが自分たちで手作りでやったものよりも、内容が豪華に見えるし、かっこよくも見えるし、お客さんにも響くし、感動もできる。だからそれを収録したDVDの売り上げがまるで違うんです。
<聞き手>
こなか・かずや 1963年三重県生まれ。映画監督。小学生の頃から8ミリカメラを廻し始め、数多くの自主映画を撮る。成蹊高校映画研究部、立教大学SPPなどでの自主映画製作を経て、86年、『星空のむこうの国』で商業映画デビュー。97年、『ウルトラマンゼアス2 超人大戦・光と影』でウルトラシリーズ初監督。以降、監督・特技監督として映画・テレビシリーズ両方でウルトラシリーズに深く関わる。特撮、アニメーション、ドキュメンタリー、TVドラマ、劇映画で幅広く活動中。主な監督作品に、『四月怪談』(1988)、『なぞの転校生』(1998)、『ULTRAMAN』(2004)、『東京少女』(2008)、『VAMP』 (2019)、『Single8』 (2023)、『劇場版シルバニアファミリー フレアからのおくりもの』(2023)など。
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