追浜工場の跡地利用の問題点

 長年自動車産業を取材してきた筆者は、追浜工場の事実上の閉鎖に、一つの時代の終焉を感じる。日本の基幹産業の未来に、暗い影が迫っていると言わざるを得ない。

 過去30年を振り返ると、日本の自動車メーカーは海外生産を拡大させる一方で、国内生産は縮小させていった。しかし、国内から生産拠点が減っていけば、下請け企業が困る。さらに言えば、ものづくりのノウハウが国内から消滅することになりかねない。そんな事態を避けるべく、トヨタは「石にかじりついてでも国内生産300万台体制を維持する」としているのだ。業績の良いトヨタは、国内生産に注力できる体力がまだある。

 しかし、業績が悪化して史上3番目の大赤字を計上した日産は、国内の生産拠点を維持する余裕はもはやない。「ゴーン事件」後の2020年3月期、2021年3月期と2期連続で最終赤字となったが、この時も「過剰生産能力」が業績悪化の一因だった。当時も追浜工場の閉鎖案が浮上したが、製造部門の役員が猛反対したため、立ち消えとなった。

ADVERTISEMENT

 今後、注目されるのは、追浜工場跡地をどうするのかだ。

日産自動車の追浜工場 ©時事通信社

 資金繰りが楽ではない日産としては、跡地を早くキャッシュに変えたいところだろう。関係筋によると、カジノを運営する米IR企業に売却するとの情報もある。その点についてエスピノーサ氏は、「詳細は守秘義務があるので言えないが、資産売価や用途の変更を検討しており、複数の相手と話し合っている」と説明する。

 しかし、日産元幹部は追浜工場の問題点を指摘する。

次のページ 写真ページはこちら