何度もダメ出しされて…

 タイミーさん以外にも、この仕事をしている人は現場に何人もいた。その人たちの動きを見ていて、大体の作業手順はわかった。さっそくぼくもやってみる。

 いざはじめてみると、3つの問題が発生した。1つ目は、各シール番号と商品名から該当する飲料ダンボール箱をピッキングするのだが、その飲料がどこにあるのかすぐにわからない。

 倉庫列にもアルファベットや番号が振られているが、シールのそれと迅速に照合できないでいた。

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 2つ目は、そのダンボール箱がけっこう重い。中に飲料ペットボトルが入っている。1箱は10~15kg程度だろう。最初は簡単にカゴ車に積めていたが、ずっとやっていると両腕が疲れてきた。

 

 3つ目は、カゴ車の荷物の積み方に戸惑った。ダンボール箱のサイズや形状は、飲料のそれに合わせているためまちまちなのである。乱雑に載せると、下の小さい荷物が上の重い荷物につぶされてしまう。そのため、カゴ車の荷のバランスが崩れてしまう。

「タイミーさん、こんな積み方をしたら、カゴ車をトラックに載せたとき、走行中に荷物が崩れてしまうよ」

 何度もダメ出しされ、その度に一から積み直した。

 そんなこんなでぼくの初出勤は終わった。途中短い休憩はあったものの、けっこう体力を消耗した。へとへとに疲れた。

 終了時刻になると、現場の社員が声をかけてくれた。タイミーさんのぼくらは、帽子を返し、事務所へと向かう。着替えてから、ここでもQRコードを読み込む。そしてS物流を後にした。

 スマホでタイミーを見ると、今日の就業時刻がきちんと記録されていた。必要なのはスマホのみ。自分の名前が呼ばれなかったことにはそれほど違和感はなかった。タイミーさんと呼ばれて、とくに悪い気はしなかった。

次の記事に続く ご主人様の“話し相手”になるスキマバイトも…失職して“タイミーさん”になった60代男性が驚いた“意外なニーズ”とは?