やなせたかしの“メルヘンな世界観”も演出している
――時間が少し遡るが、次郎からのプロポーズを一旦断ったのぶが、思い返して走り出し、橋の上で次郎に追いつくシーンがあった。「こんな私でよかったら、よろしゅうお願いします」と頭を下げるのぶと次郎。橋の上、2人が笑い合うと、街灯に次々と火が灯った。引きの映像が、とても美しい。
チーフ演出・柳川強の演出です。あのシーンに限らず、26週全体(最終回まで)を通して、やなせさんのメルヘンチックな世界観も出していきたいと思っています。やなせさんの詩集にはイラストが添えられていて、やなせさんにとっては言葉と同じに大切なものだと思います。言葉とイラスト、両方からのインスピレーションで台本も映像も作られています。
母の登美子(松嶋菜々子)が白いパラソルをくるくる回しながら、幼い嵩と千尋を置いて去っていくシーンが第1週にありました。やなせさんが詩集『やなせたかし おとうとものがたり』に書き残した光景です。嵩と千尋、時にはのぶも交ってシーソーで遊ぶシーンは成長してからも出てきます。「シーソー」という詩とイラストも、『やなせたかし おとうとものがたり』に入っています。
今後の展開でメルヘンっぽさが感じられるとすれば、一番はミュージカルのシーンでしょうか。やなせさんは1960年、「見上げてごらん夜の星を」というミュージカルの舞台美術を担当します。作曲はいずみたくさんで、「あんぱん」ではいせたくやとして、Mrs. GREEN APPLEの大森元貴さんが演じます。
再現した舞台美術はもちろんやなせさんのテイストですからメルヘンっぽいです。大森さんに歌っていただくのも注目だと思います。
主題歌は“RADWIMPSさんしかいない”と思った
――倉崎さんからは音楽の話がたくさん出てきた。そして、音楽とセットで「死」が語られた。
一人ひとりが命をどう使っていくかを考えてもらいたい。そのことは、すでにお話ししました。死を近くに感じるからこそ、生が輝く。そういうふうに考えてもいます。