嵩は漫画家としてなかなか芽が出ません。ヒット作を生み出せず、さまよっていくわけで、10歳ほど年下の手嶌の才能に嫉妬します。そんな新しい登場人物たちの関係も、新鮮かつ興味深いと思います。

のぶは、このあとも走り続ける

――「あんぱん」は、7月2日に自己最高となる世帯17.8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)となり、視聴率が右肩上がりだ。

おかげさまで、現場の士気も上がり続けています。のぶと嵩はこれからもずっと「何のために生まれて、何をして生きるか」を探し続けます。やなせさんは暢さんがずっと応援してくれたから、当初は必ずしも評判のよくなかった『アンパンマン』を書き続けるんです。のぶがどう走り続け、嵩をどう引っ張っていくか、注目していただきたいです。

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――インタビューの最後、スタッフ全員がさながら「アンパンマンオタク」ですね​、と伝えた。すると倉崎さんは。

はい、そうです。やなせさんと暢さんに関するありとあらゆる資料に、スタッフ全員が1年以上、触れ続けています。本や番組、アーカイブ資料などですが、世の中の誰よりも『アンパンマン』に詳しくないといけないという思いは今も変わりません。クランクインまでに全国の「アンパンマンミュージアム」にも行ったのですが、すごいのが、行くと、とにかくみんなが笑顔なんです。アンパンマンの力ってこういうことなんだ、やなせ夫妻が亡くなった後も子どもたちのためになっていて、だから親子がみんな幸せそうなんだ。そう実感しました。

未来への希望。そう思いました。ドラマを通じて大事に伝えたいと思います。

矢部 万紀子(やべ・まきこ)
コラムニスト
1961年生まれ。83年、朝日新聞社に入社。宇都宮支局、学芸部を経て、週刊誌「アエラ」の創刊メンバーに。その後、経済部、「週刊朝日」などで記者をし、「週刊朝日」副編集長、「アエラ」編集長代理、書籍編集部長などをつとめる。「週刊朝日」時代に担当したコラムが松本人志著『遺書』『松本』となり、ミリオンセラーになる。2011年4月、いきいき株式会社(現「株式会社ハルメク」)に入社、同年6月から2017年7月まで、50代からの女性のための月刊生活情報誌「いきいき」(現「ハルメク」)編集長。著書に『笑顔の雅子さま 生きづらさを超えて』『美智子さまという奇跡』『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』がある。
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