成功する人の研究とは
ところが今は、そんな環境にないようですね。博士号を取得後は、ポスドクという大学や研究機関で任期付きの研究活動を行う研究者への道が主で、安定しない身分のまま落ち着いて研究ができない。任期も決まっているので、パッと脚光を浴びる、流行りのテーマに飛びつき、結果を急ぐしかありません。
研究というのは流行りに乗るよりも、流行っていないことに目をつけ、独自性のあるものこそ良い結果に繋がります。周りを見ていると成功しているのはそういう人が多いです。幸運にも私はいろいろな学問を経て、数理脳科学に行き着きました。脳の仕組みを数理で解明するという壮大な夢を抱いて懸命にやってきました。理論はたくさん作り上げたものの、脳の実態をまだ完全に把握できてはいません。しかし、数理で脳を知ろうとする風潮は、いま世界中におきています。人工知能の飛躍的発展も、数理脳科学の研究成果の上に成り立っているのです。
研究者は未来を担う大切な存在です。安定した研究環境をつくれるように、国は予算を組んでいただきたいです。そのとき大事なことは、資金は政府が出すけれども、研究は自由にまかせ、時には政府への批判が生じてもよいと度量を大きく構えることです。研究者と政府双方が自由に討論できるのが健全な姿です。学術は権力を持たない分、言いたいことが言えるのも自然なことでしょう。
※本記事の全文(約7000字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」に掲載されています(甘利俊一「実は英訳にチャットGPTを使ってます」)。全文では、下記の内容をお読みいただけます。
・成績が悪くて良かった!?
・「目を広く開きなさい」
・「俺が行く」と手を挙げる
・囲碁、ドラクエ、スキー
・人工知能は使っておくべき
出典元
【文藝春秋 目次】永久保存版 戦後80周年記念大特集 戦後80年の偉大なる変人才人/総力取材 長嶋茂雄33人の証言 原辰徳、森祇晶、青山祐子ほか
2025年8月号
2025年7月9日 発売
1700円(税込)
