「ある出来事がきっかけで、『私がやりたいのはお笑いだったんだ!』と気付くことになったんです」

 自衛隊→看護師→モデルを経て、31歳で「お笑い芸人=天職」だと気づいたのが、女性芸人のまつなみさん。現在は外資系企業に勤務しながら、「和式トイレ」や「脚立」などを用いたユニークな芸風で観る人を沸かせている。いったい芸人になるまでに、どんな人生を歩んだのか? 異色のキャリアを築く、彼女に直撃した。(全2回の1回目/後編を読む)

なぜ31歳で芸人に? ©山元茂樹/文藝春秋

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自衛隊訓練に明け暮れた女子大生時代

――普段はどんなネタをやっているのですか?

まつなみさん(以下、まつなみ) OLの制服姿で脚立に登って漫談をする「脚立の女」というネタをやっています。過去には、黒いタンクトップに黒タイツ、ハイヒール姿で、手作りの和式便器にまたがって漫談をしていたこともあります。

――普段は会社員をしているそうですが、体を張ったネタに抵抗はないですか?

まつなみ むしろ「気持ち良い」と思ってやっています。外資系企業勤務というプロフィールから、「どうせお高くとまってるんでしょ」と思われがちなのですが、小道具の和式便器を作っていたときは「これが私がやりたいことだ!」と生きがいを感じていました。

漫談「和式トイレ」を披露するまつなみさん(画像:YouTube)

――芸人になる前は、自衛官や看護師、海外勤務をしていたそうですね。国立医学部卒だとも聞きました。

まつなみ 三重大学医学部の看護学科を卒業しました。教育熱心だった母に勧められて、看護師を目指していたんです。でも大学4年間は講義よりも、自衛隊の訓練漬けの日々でした。

 自衛隊は「予備自衛官補」という、普段は学生や別の仕事をしながら有事の際には招集されて任務にあたる、“非常勤の自衛官”を採用しているんです。大学に入学してすぐ、予備自衛官補の試験を受けました。3年間で50日間の教育訓練に従事しなければならないのですが、私は自主的に年間50日ほど訓練していたので、大学を休み過ぎて単位を落としそうになりました(笑)。

 子どもの頃から自衛隊に興味津々で、「戦地を自分の目で見て、貢献したい」という思いがありました。本当は防衛医大に入りたかったのですが落ちてしまいました。

――どんな訓練を受けていたのでしょうか。

まつなみ 滋賀県の「大津駐屯地」で、戦車や格闘訓練 などを受けていました。自分のライフルを持って、組み立て、清掃、解体の訓練もありました。高校では陸上部で400mハードルをやっていたので運動は得意な方だったと思います。全ての教育訓練を終えたときは、部活よりもずっと大きな達成感がありました。

 私が一番得意なのは「第5ほふく」で、一般的にイメージされる「ほふく前進」とは違い、完全に大の字に伏せて顔を下に向けた状態で地面を這いながら進むんです。今でも家で練習しています。

――自衛隊では、まつなみさんは目立っていたのでは?