『LOVE』――女性医師とゲイの看護師の理想的な関係
そして昨年度のベネチア映画祭で話題を呼んだのが3本目の『LOVE』。病院の泌尿器科で働くマリアンヌと、同僚の看護師でゲイのトールの関係を軸に、2人の恋愛観や人生観を織り込む。マリアンヌは独身、結婚にとらわれない自由な生き方は、親友さえうらやむほど。トールはマッチングアプリで出会う恋人たちとの自由恋愛を謳歌している。ライフスタイルは異なれど、同僚として非常に理想的な関係を保つ2人の会話は思いやりと他人を理解しようとする寛大さにあふれ、胸を打つ。トールが思いをよせる癌患者の男性との向き合い方なども学ぶものが大きい。
――3部作を貫くのは、人々が交わす痛いほど正直な会話だ。これは監督が作り上げたもの? それともリサーチによるもの?
監督 セックスや夢などについてオープンに語り合う家族が実際に存在することは知っているよ。でも作品中の会話は、すべて想像で書いたもの。僕にとって大事なのは、現実的かどうかということではない。俳優に脚本を渡した後で修正した部分もあるけれど、それもカットしないで会話を続けていくために必要な修正だった。2人の人間にできるだけ長く会話を維持させることが重要だったから」
3作を通しオスロという街を間近に見られるのも嬉しい。『SEX』では昔ながらの煙突掃除を職業とする家族が新興住宅地に住む設定だし、『DREAMS』では、ヨハンネが旧市街から、移民の多い商店街や再開発が進む高層住宅(?)地区(祖母のいう資本主義の牙城?)へ向かって歩くシーンなど、街の表情が生き生きととらえられている。『LOVE』ではマリアンヌの親友がオスロ市再命名(かつてクリスチャニアと呼ばれ1925年にオスロに戻る)100周年記念イベントを企画するという設定で、市庁舎周辺にある彫刻にこめられたノルウェー社会の理想について触れたりする。市庁舎はノーベル平和賞の授賞式の会場で、内部に施されたモザイク絵画が素晴らしい。
