「私が一番かわいい」自分から言って覚醒していくスタイル
あまりにも早く夢が現実になったパターンの過酷さを、ありのまま見せてくれたのも、道重さゆみだった。ソロパートがほとんどなく、パフォーマンスで見せ場がなかった期間が続き、表情が暗くなっていく。
しかし彼女はいつからか、そこから抜けようと、「こうなりたい」や「この役目をしたい」を、どんどん公言していくようになった。ナルシストキャラと呼ばれるきっかけになった「私が一番かわいい」「今日もかわいい!」と言うクセは、その最たるものだろう。「なりたい」を「なる」という現在進行形で言葉にし、イメージを本物に変えていった。
ブログも、自分からやりたいと事務所に懇願し、ラジオでも言い続けた。おかげでモーニング娘。メンバーで最も早くブログデビューしている。2012年、新垣里沙の卒業時には、卒業イベントの数カ月前から「リーダーになりたいです」と立候補。31thシングル「歩いてる」も、好きだ好きだと連呼し、その結果、ベストアルバム『The Best!~Updated モーニング娘。~』ではソロで歌うことができている。
2012年、リーダーになってからは「いま、たくさんのアイドルがいるので“倍返し”で巻き返しできるようにがんばります!」と宣言し、実際、モー娘。人気を復活させている。
好きなものは好き、やりたいことはやりたいと言う。そうしてチャンスを作っていく。有言実行、言霊の人である。
久住小春に向けた「嫌いだったよ、あなたのこと」
もちろん、言葉は諸刃の剣で、道重も何度か炎上している。「私が一番かわいい」を強調し過ぎて、2009年には、嫌いな女性タレントランキングにも入った。2010年、アイドル戦国時代に突入したばかりでグループ(とファン)同士ライバル意識が強かった時代、ユーストリーム動画で「AKB48が好き」とジェスチャーでこぼし、物議をかもしたこともある。2005年に教育係を任された久住小春との確執は話題となったが、久住の卒業コンサートで、道重はこう締めている。
「正直に言うと、嫌いだったよ、あなたのこと。でも、だからすごいわかんないの。なんでこんなに寂しいのかなって思う」
私はこれを聞いた時、彼女の言葉力に舌を巻いた。感情を無理に整理せず、本音を交え、前向きに相手に伝えるトークの構成、見事……! それ以来、ただの毒舌ではなく、信頼に変わっていった。道重さゆみは、伝えることで進んでいく人なのだ。道重さゆみのブログで「大好き」と紹介されていた、こんな歌詞がある。
なんでも話してほしかった 言えないことは 優しさのせいでもさみしい
(「サユミミライ」作詞:大森靖子、作曲:K2-Dee)
