「僕が行ったほうが早いじゃないですか」

「警察はひとりの件ではなかなか動かないし、弁護士に頼むとお金がかかります。僕が行ったほうが早いじゃないですか。警察に任せたほうがいい、という人には、『困っている人がいるのに、何であなたは行かないの?』と逆に思います」

 時間を割いて、大なり小なり発生する金銭的コストもかけて、フナイム氏は自ら行動した。相手に反論されたり通報されたり、訴えられたりなど、揉め事になるリスクもあるのに、わざわざそこまでするのはなぜなのか。背景には、収入や再生回数や売名などの目的があるのでは。

 その問いをフナイム氏は強く否定し、「動画にして公開することに社会的意義があるからです」と強調する。

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「人って不安なことがあったら、同じ事例を調べますよね。詐欺に遭いそうになっている人が、ネットで検索して、手口を解説している動画にたどり着くと、『こういうことか』『じゃあこういう風にすればいいんだ』と対策できるんです。

 動画にすれば、こういう現実があるんだ、と広めることもできます。夜間中学の件もそうですし、痴漢もそう。僕も捕まえたことがありますが、(被害者の)148センチくらいの子が、電車で7~8人の男に囲まれて、もみくちゃにされてるんです。

 男たちは背が高いから、痴漢されていることは周りから見えない。女の子は泣いていましたからね。警察官だけが取り締まってもらちがあかないし、女性専用車両を作っても痴漢が減るわけない。動画で伝えていかなきゃいけないんです」

 動画にすることに対しては、「必要があるのか」「動画にしている時点で正義に見えない」といった批判もあるが、フナイム氏は「隠れてやるのもいいと思うけれど、ただのきれいごとじゃないですか」と反論する。

フナイム氏は活動の目的について、お金や再生回数ではなく「社会的意義」と語る ©beauty_box/イメージマート

 人助けをした人が、名前を聞かれて「名乗るほどのものではありません」と立ち去ることに、多くの人は美徳や崇高さを感じるだろう。フナイム氏もそれを否定はしないが、世直し活動を動画コンテンツにしている理由は、正義うんぬんより、あくまで自身の目的のためだという。

「僕は詐欺をして35歳で逮捕されて、刑務所に約5年入っていたんです。妻も子どもも、お金も信用も全部失いました。そんな自分の経験を踏まえて、犯罪は加害者も被害者も破滅しかない、ということを伝えたいんです」

 そもそも動画も、違法にアップしているわけではない。YouTube という正規のツールで、しかるべき手続きを踏んで審査も通っているため、動画を公開する権利がある。 何ひとつやましいことはない、と主張する。

次の記事に続く 「10万振り込みます、と言ってくれる人も多い」特殊詐欺リーダーで懲役5年→“私人逮捕系YouTuber”になった男性が明かす収入事情

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