私人逮捕には「ケガをする」「ケガをさせる」「冤罪で逮捕してしまう」などのリスクのほか、同業者が相次いで逮捕されていることもあり、世間からの逆風もある。なぜ、あえてこの活動を続けるのだろうか。

 その背景には、「世直し」「正義」などの強い感情があるのだろうか? 尋ねると、Y氏もS氏も笑って否定した。

Y氏「僕はないんですよ。自分が楽しくて、世のなかも良くなるのだったらそれがいいよね、っていうところを突き詰めていった結果、これになっているってだけなので」

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S氏「ないっす。普通に盗撮犯が嫌いなだけなんで、ひとりでも多く捕まえてって感じですね。(盗撮犯は)卑怯な手口で撮るわけじゃないですか? 気持ち悪いんで。それが嫌いっす」

警察から“感謝”されることも

 でも、それでいいと思っている、とY氏は続ける。なぜなら、YouTubeはかつて、キャッチコピーで「好きなことで、生きていく」と掲げ、自己実現したユーチューバーたちを紹介していた。スーパードミネーターも、正義うんぬんではなく、自分たちが面白いと思うこと、したいことを全力で動画にしているだけなのだ。

 思いは理解できた。ただ、盗撮撲滅という目的に対し、パトロールをして現場を見つけたら私人逮捕をするというやり方だと、さまざまなリスクが生じる。違う方法、例えば「盗撮をするな」「人生を棒に振るぞ」と書いたプラカードを持って、駅構内を徘徊するなどのほうが平和的ではないのだろうか。

 聞くと、Y氏は即座に首を振った。

Y氏「その場での抑止にはなるかもしれないんですけど、盗撮犯は駅を変えて、時間を変えてやるんですよ。だからこそ、スーパードミネーターが横浜駅で盗撮犯を捕まえているのを動画にすることによって、少なくとも横浜では起こらないんですよ」

警察から、暗に感謝されることもある ©akiyoko74/イメージマート

 盗撮をした人が捕まる場面を見せるのが大事だと思っている、とY氏は続ける。自分たちのような見回り役がいるとわかれば、横浜駅に盗撮犯は来なくなる。ゆくゆくはメンバーをもっと増やし、ほかの駅でも展開していくことで、最終的に盗撮そのものを減らしたいのだという。

 実際に、横浜駅の前に活動拠点にしていた駅では、スーパードミネーターの存在が抑止力になったそうで、管轄の警察署の刑事から「盗撮がめちゃくちゃ減っている」「(盗撮犯が減って)もう全然捕まえられなくなっている」と言われたのだそう。警察からすると、公式に「ありがとう」「助かっている」などとは立場的に言えないだろうが、舞台裏では確かにこのようなやり取りがあるのだと彼らは明かした。

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